最近、愛妻家で知られる人気芸人の不倫が発覚し、メディアを騒がせています。学生時代に壮絶ないじめに遭っていたことを告白して共感を呼んだこともあり、ネットでは「イメージと真逆」「好感度が落ちた」とがっかりする声も多いです。

 もちろん不倫は良いこととは思いませんし、反省すべきとは思いますが、このニュースに触れて人間の複雑さを改めて感じました。奥さんやお子さんを愛することも、いじめ問題に真摯に向き合っていたことも、この芸人さんにとっては嘘のない真の部分だったかもしれないからです。

 いい人に見えて悪事にも手を染める。これは極端な例かもしれませんが、一歩間違えば自分も含めてどんな人にも当てはまることなのかなと思います。

 ということで、池波正太郎の時代小説『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵の名台詞が本日のコトバスです。『鬼平犯科帳』は単純な勧善懲悪ではなく、悪人の背景まで描いているところが大人の心に響くのでしょう。

《人間(ひと)とは、妙な生きものよ。悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事をはたらく。こころをゆるし合うた友をだまして、そのこころを傷つけまいとする。》

 江戸の町で火付盗賊改の長官を務める平蔵は盗賊から「鬼の平蔵」と恐れられるが、その素顔は人情味に溢れてます。酸いも甘いも噛み分けた平蔵が語る「人間の多面性」にグッときます。(知)