定年を前に早期退職したTさんが最近、久しぶりに会社に顔を出した日のこと。恩人ともいえる先輩の元気な顔が見られて嬉しく思っていたところ、ほかの同僚との会話が耳に入ってきました。

 Tさん「◯◯君、昔から変わんないよね」
 ◯◯君「そんなことないっすよ、髪も薄くなったし」
 Tさん「あるだけいいじゃない」

 日ごろから “薄毛”の自虐ネタで、みんなの笑いを取っていたTさん。あー、またやってるよ……と聞き流していたのですが、ふと、これって髪の毛だけの問題じゃなくて世の理(ことわり)に通じる奥深い言葉なのでは、と気づいたのです。

 スランプに陥ったとき、私も自己を過小評価したり不平不満を言いたくなりますが、「仕事があるだけ恵まれてるよね」「好きなことがあるから、まぁいいか」と自分に言い聞かせるようにしています。要は「足るを知る」(by老子)ってことですね! 欲を言えばキリがないですし(ただし向上心は忘れずにいたいものです)。

 立ち聞きではありましたがTさんの “名言” に思いがけず、ハゲ励まされた気がしました。

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 編集部員みんなでタスキをつないで毎日、連載してきた「コトバスケット」はこれが最終回になります。バックナンバーは明日以降も公開していますので、よろしければ読んでやってください。ありがとうございました。(純)