ショッピングセンターなどの商業施設や駅ビルでよく見かける雑貨店『Bleu Bleuet(ブルーブルーエ)』。全国各地に175店舗を構え、いつまでも「かわいい」が好きな女性の心をくすぐる商品展開やお店づくりが魅力です。私も学生時代からお店に通う大ファンの一人なのですが、実は今年、ブルーブルーエが創業35周年と知り、これまでのお店のあゆみや雑貨へのこだわりを深掘りしたくなりました。
早速、株式会社ブルーエブルーエジャパンに取材を申し込んだところ、快諾。広報の鵜野恵実さん、商品部部長の辻美佐子さんにお話を伺いました。
創業時のコンセプトは「パリのリセエンヌ」
──35周年と聞いて、実はそんなに歴史があったのかと驚きました。ブルーブルーエは1986年に渋谷の路面店からスタートしたそうで。
鵜野さん:弊社社長の神山(邦雄氏)が小売業をやってみたいという思いがあり、その中でもパリのリセエンヌ(フランスの女子学生のこと)の生活スタイルをイメージした雑貨店がいいと渋谷にお店を立ち上げました。当時はインテリア雑貨やキッチン雑貨を中心に扱っていました。
──店名の「ブルーブルーエ」はどういう意味なんでしょうか?
鵜野さん:フランス語で「野に咲く矢車菊の深い青色」という意味です。
──お店の看板やロゴも深い青色ですが、ここから来ているんですね。それから店舗を増やしていく中で、どのように変化していったのでしょうか?
辻さん:1990年代になって若者向けのファッションビルに出店していくんですが、雑貨はもちろん服飾を求めるお客様が多くて。ハンカチやステーショナリーとともに、ニーズに合わせてオリジナルのかごバッグやスニーカー、Tシャツなどの服飾雑貨も作り始めました。2000年くらいから動物モチーフのものが売れ筋で増えていき、2010年から2020年くらいになるとミッフィーやスヌーピーなどのキャラクターものも扱い始めました。
服飾雑貨だけでなく、コスメや食品も扱う
鵜野さん:年代を追うごとに品目が増えていってますね。今は食品やコスメも含めて、マルチに展開しています。
──ネイルやリップクリームなどのコスメはブルーブルーエさんらしいかわいいパッケージで、気になっていました。
辻さん:「クレームブルーエ」は2020年9月から始めました。成分には植物性のものを多く使ったり、匂いにも細かくこだわってオリジナルで作っています。去年よりリップカラーとネイルカラーが加わりました。パッケージもかなりこだわっていて、ふたを開けるとリップがクローバーの形になっていたりとか、女の子がキュンとするようなものにしています。コスメって毎日使うものなので、買ってよかったらリピートしていただきたくて、挑戦したいと思いました。ギフトにしやすい価格帯なので、ハンカチなどと組み合わせてプレゼントにしていただけたら。
鵜野さん:食品を扱う店舗も徐々に増やしています。今は、はちみつ紅茶が大ヒットしています。
見るだけでキュンとするオリジナル商品の誕生秘話
──私が今一番気になっているのが、くまやうさぎのぬいぐるみをモチーフにした「あの頃のともだちシリーズ」なんです。店頭でこの巾着を見た瞬間に、かわいすぎてすぐに買ってしまいました。
辻さん:うれしい、ありがとうございます。
──私が小学生だった1980年代後半から1990年代前半くらいに流行した、ちょっと懐かしいぬいぐるみを彷彿とさせますが、これもオリジナル商品ですか?
辻さん:そうです。コロナ禍に入ってから自宅で過ごすことが多くなったので、あの頃の懐かしい気持ちを思い出して、ぬいぐるみをかわいがってくれるかなと思ったのが企画のきっかけでした。巾着は毎日持ち歩けるので、見るだけでキュンとしたり、ワクワクしたり。そういう部分を大事にしてオリジナル商品を作っています。触った時の柔らかさや、昔っぽい素材にも、企画担当者のこだわりが出ています。
──私はまんまとその思惑にハマったんですが、よくぞ作ってくれたという思いがあります。レトロブームがちょっと前から来ていますが、雑貨分野でも?
辻さん:来ていますね。2018年に始めた「喫茶ブルーエシリーズ」もレトロな喫茶店に出てくるクリームソーダをイメージしています。弊社のお客さまはクリームソーダがモチーフとして好きみたいで、大きく展開したらヒットしました。ちょうどそこにレトロブームがやってきたという感じです。
──「アートシリーズ」も面白いですね。ゴッホやモネの有名絵画が時計などのグッズになっていて。
辻さん:最初は面白みのあるものを作りたいと思ってスタートしたのですが、かなりヒットしています。まさかここまで売れるとは思っていませんでした(笑)。時計が一番人気で、新たに「モネの庭」、ゴッホの「星降る夜」、ルノアールの「可愛いイレーヌ」を作りました。キャンバスバッグやTシャツも売れています。
──普通にかわいいものでは満足できない女の子が反応しているのだろうなと思います。他のお店では見かけない、ブルーブルーエさんらしい商品ですね。
辻さん:はい。自信を持ってそう言える商品ですね。ファンシーなものだけでなく、ユニークなものを入れてみるというのは常に考えています。
──ファンシーといえば、新たに出た「くまのパンパンぱん屋さんシリーズ」も注目です。これは一体……?
辻さん:これはパンをモチーフにした商品を作りたかったんですが、他との違いを出すためにくまのクロックムッシュくんがパン屋さんの店長という設定にしました。素直に「くまのパン屋さん」だと印象に残らないと思い、意識に引っかかるように「パンパンぱん屋さん」に。あまり意味はなく(笑)、響きを優先しました。商品名は結構、SNSでバズったりするので。そういうのも考えています。
大ヒット「木彫りクマのぬいぐるみ」の付録雑誌が発売
──「木彫りクマのぬいぐるみ」も、SNSでバズったそうですが。
鵜野さん:これはすごかったです。もともとは2018年に展開した北海道フェアで作成したものだったんですが、大きく反応があって、すごく売れました。大中小のサイズをそれぞれ買って、親子のように並べて「ぬい撮り」する方もいらっしゃいました。
──35周年記念ブックで「木彫りクマのぬいぐるみポーチ」が特別付録になっていますよね。
鵜野さん:去年の夏くらいに、以前から弊社のファンでいらした宝島社さんの編集者の方から、「木彫りクマのぬいぐるみポーチを付録にしてブックを出されませんか?」っていうご提案があったんです。たまたま35周年もあるので、いい機会だとお受けしました。宝島社さんの中では雑貨屋さんの付録つきブックは初めてらしくて、ありがたいお話です。
──派手なかわいさはないものの、木彫りクマのポテンシャルはすごいですね。
辻さん:木彫りクマをお好きな方はたくさんいらっしゃるようです。それに加えて弊社ではくまのモチーフの商品がすごく売れるんです。最近は深海魚とか、シマエナガやハシビロコウなんかのレアアニマルのキャラクターものも人気です。
──細分化していくと、動物園のグッズより多いということになってしまうかも……?
辻さん:増えすぎないように気をつけています(笑)。店頭を占拠するとファンシーショップになってしまうので、そこの境界線は守りたいなと。コロナ禍では癒やされる動物モチーフをお客様がすごく求めているので、今の状況ではやっていく方向ですが、コロナが収束したら、世界的なトレンドであるアウトドア系やSDGs、ジェンダーレスなものなどの商品も広げていきたいと思います。弊社はどうしても女性ものが多いんですが、男性の方も買っていただけるように、サイズもわざと大きくしたりしています。
店づくりのキーワードは「宝探し」
──商品を仕入れたり、作ったりする際に重要視していることはなんでしょうか。
辻さん:付加価値のあるものが大切だなと思っています。正直、弊社で売っているものって、100円均一でもそろうものだと思うんです。だけどお客様は、生活に色を添えるためにちょっと高くても買ってくださいます。ステーショナリーにしても内容量が少なくて、普通なら「これで500円するの?」と思う場合でも買ってくださる。その付加価値っていうのは、弊社が大事にしていかなきゃいけないものだと思っています。
──店舗のお話も伺えればと思います。「ブルーブルーエ」「マルシェドブリューエプリュス」「デトールアブルーエ」の3つのブランドを展開されていますが、どんな違いがあるのでしょうか。
鵜野さん:店舗数の一番多いブルーブルーエは「地元の素敵なお店」がコンセプトです。キーワードは「宝探し」で、何かあるワクワク感、お客さんが楽しく商品を探せる店づくりをしています。例えば、最近オープンしたお店は什器の置き方も直線的ではなく、曲線的な什器を配置して。なんとなく迷路のような感じで、見て回ってしまう感じは意識しています。
マルシェドブリューエプリュスは、衣食住をテーマにした心地いい空間というのがコンセプトです。ヨーロッパのマルシェの雑多感をイメージして、什器やディスプレイにこだわっています。ブルーブルーエは15坪前後の広さがほとんどですが、マルシェドブリューエプリュスは倍の30坪以上のところもありますので、ゆっくり見ていただく感じですかね。
デトールアブルーエは寄り道したくなるようなお気に入りの場所をコンセプトに、衣食住の雑貨にカフェを併設しています。季節ごとに違うオリジナルドリンクや焼き菓子などを楽しめますので、気楽に立ち寄っていただきたいですね。
──ブルーブルーエの「宝探し」というのは納得です。私もどんなものがあるかなって定期的にウォッチして、新しくてかわいいのがあったら買うという動きをしているので、滞在時間が長い気もします。商品の展開も速いですよね。
辻さん:そうですね。イベントものは1か月半くらいで変えていっています。売れているものは定番商品として置いてはいるんですが、お客さまを飽きさせないっていうのは意識しています。新商品は1週間で100種類以上入ってきます。展開も大変ではありますが。
「みんなの毎日を楽しくする」という理念は変わらない
──ちなみに、ライバルのように意識しているお店はあるのでしょうか?
鵜野さん:特にはないんです。同じ雑貨屋さんでも弊社と構成や展開が違ったりしているので、あまり意識していることはないですね。それぞれの個性を発揮して共存していければと思っています。
──ブルーブルーエなりの店づくりを追求しているんですね。「ちょうどいい」という言い方は失礼かもしれないんですが、普段使いもできて、ギフト用も買えて、お店を見るワクワク感もあって。他と比べられない魅力があるので。
鵜野さん:ちょうどいいっていうのは、一番の褒め言葉じゃないかなと思います。ちょうどいいっていうのを表現するのがすごく難しいので偏りがちですし、自分たちのことを売り込むっていうと何か特色が欲しくなっちゃうんですけど。いろいろなことをやって誰かに引っかかりたいと思っているので、「このお店に行くとちょうどいい」という言葉はうれしいです。
──よかったです。最後に、企業としての今後の展望を教えてください。
鵜野さん:弊社は「みんなの毎日を楽しくする」が企業理念なので、ここ1本ですね。シンプルな雑貨を扱うお店は他にたくさんありますが、弊社の商品は生活にちょっと彩りを加えるものとして買っていただけていると思います。あとはギフトを選ぶのに使っていただくことも多いので、贈る相手の方に楽しさが連鎖していくといいなと思うんです。買う方も楽しいし、もらった方も楽しくなれるようにできたら。「ブルーブルーエに行ったら楽しめる」と思い浮かべてもらえたらいいですね。
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鵜野さん、辻さんとお話しして、ブルーブルーエジャパンのみなさんが「お客様に楽しんでもらえるものを作ろう」という思いにあふれていることが伝わりました。作り手・送り手側のそういう気持ちが、お店のワクワク感に表れているんだろうなと思います。今後、ブルーブルーエのお店を訪れるのがさらに楽しみになりました。
(取材・文/小新井知子)