コロナで失業、家賃が払えない……どうすればいい?

 新型コロナ不況の煽りを受け、フリーランスで働く人の仕事が減ったり、雇い止め、派遣切りなども増えている。休園中のディズニーランドでは、1か月の手取りが5万円にも満たない非正規雇用のキャストもいることが報じられたばかりだ。大小問わず、全国でこのような事態が発生していることは容易に想像がつく。

 家賃が払えなくなったら、どうすべきか。稲葉さんいわく「もう無理だと思い、夜逃げするのは絶対にダメ」だそう。払えなくなった時点で部屋を追い出される、と思っている人が多いが、実際は借地借家法に基づく『居住権』(賃借権がなくなった後も事実上、継続して居住できる権利)があるので、1〜2か月程度ならば住み続けることができるという。

『住まいの貧困に取り組むネットワーク』の世話人でもある稲葉さんは、3月28日に『すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール』を発表。コロナ危機の影響で家賃滞納が急増しかねない状況をふまえ、全国の大家に「立ち退き要求は行わず、共に政府に公的支援を求めること」を訴えた

 そもそも、家主や不動産業者、家賃保証会社等が法的手続きを踏まずに家賃滞納者を立ち退かせることは違法だが、ひどい場合だと、家主側が荷物を勝手に処分したり、鍵を付け替えて開けられなくする、ということもあるという。これらの行為には民事上のみならず、刑事上の責任も生じるとのこと。

 ただ、家主にも生活がある。家賃収入がなければ、生活に困る人もいるだろう。だから稲葉さんは「無理やり追い出しても、家が空き家になるだけで得をしない。入居者が家賃を払えるようになるため、公的な支援の充実を求めましょう」と呼びかけている。「もし家主や不動産業者が家賃の滞納について問い合わせてきたら、この『緊急アピール』をプリントアウトして、渡してみてください」と稲葉さんは語る(緊急アピールの全文は写真ページ参照)。

稲葉さんが発表した『すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール』全文

 借主側に対しては「無理やり追い出されそうになった場合は、細かく記録を残すように。録音したり、張り紙を写真に残したりしましょう」とのことだ。

 ただ、3か月を過ぎると、家賃を払わずに住み続けるのは難しい。裁判で合法的に追い出されてしまうので、早めに支援を求めることが必要だという。現在、主な対策として考えられるのは、以下の2つだ。

(1)緊急小口資金の申請

 各市町村の社会福祉協議会は、収入が減った世帯に原則10万円を貸与する『緊急小口資金(特例貸付)』の申請を受け付けている。貸付は無利子で保証人も必要なく、返済までの据置期間は最長1年。要介護者や感染者がいる場合、子どもの世話で仕事を休んだ世帯などは、特例で上限が20万円になる。現在、タクシー運転手、飲食店経営者、イベント関係者などが多く相談に来ているという。

(2)住宅確保給付金の利用

 離職や失業などによって家賃の支払いが困難になった人は、生活困窮者自立支援法に基づく『住居確保給付金』の活用も考えてみよう。申請し一定の要件を満たせば、再就職までの原則3か月間(最長9か月)、自治体が賃貸住宅の家賃を補助してくれる制度だ。従来、65歳未満までしか支給対象ではなかったが、4月1日支給分から年齢制限などが撤廃された。相談先は、各自治体の生活困窮者自立支援制度の窓口になる。

 気になる人はぜひ、各都道府県の社協や厚生労働省のホームページを覗いたり、各自治体の窓口へ相談したりしてみて欲しい。