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音楽

中森明菜、4つの外せないB面曲から読み解く成長の物語と「今なお愛されるワケ」

SNSでの感想
妖艶な雰囲気をまとってステージに立つ中森明菜('87年)
目次
  • 低音のカッコよさ、言葉の説得力の高さ
  • B面曲もテレビ番組でよく歌われた

 '80年代女性アイドルの頂点の座に君臨し、今も昭和を振り返る番組などでは、松田聖子とともに特集が組まれることの多い中森明菜。彼女はシングル21作で週間チャート1位を獲得したことに加え、1985年に発売した『ミ・アモーレ』と'86年の『DESIRE -情熱-』で、女性歌手で初めて日本レコード大賞を2年連続で受賞。'78年~'89年に放送された人気番組『ザ・ベストテン』でも、69週にわたって1位に輝くという最多記録を打ち立てた。さらには'83年~'87年、5年連続で日本有線大賞最多リクエスト賞を受賞するなど、輝かしいヒット記録を打ち出している。

 上記の功績からも、明菜は名実ともに日本を代表する歌姫のひとりと言え、彼女の楽曲を一度も耳にしたことがないという人は少ないはずだ。しかし、その知名度に対し、彼女のシングルB面曲が語られることは意外にも多くない。例えば、同時代にトップアイドルとして明菜と双璧をなしていた聖子は、音楽番組『レッツゴーヤング』のワンコーナーソングだった『Eighteen』、卒業ソングの名曲と語り継がれる『制服』、『サントリーCANビール』CMソングの『SWEET MEMORIES』、ドラマ『青が散る』主題歌の『蒼いフォトグラフ』など、(タイアップや両A面シングルの影響もあるだろうが)コアなファン以外にも人気のB面曲が大量にあり、明菜との違いは歴然としている。

 しかし明菜のほうも、シングルB面が手抜きというワケでは決してなく、むしろA面にしてもおかしくないような名曲が詰まっている。現に、'82年~'91年に発売された26枚のシングル(12インチを除く)のうち、A面とB面の作詞家×作曲家が完全に一致しているのは'84年の『北ウイング』(康珍化×林哲司)1作のみで、大半がどちらをA面にするか競うかのように作られており「こちらがA面でもよかったのでは?」というファンの意見も少なくない

 そこで、今回は当時を知らない方々にも深く知ってもらう手がかりとして、数ある名曲の中から4曲をピックアップしてみた。

低音のカッコよさ、言葉の説得力の高さ

 まず、'82年に発売された1stシングル『スローモーション』のB面『条件反射』(作詞:中里綴/作曲:三室のぼる/編曲:船山基紀)を挙げたい。本作は、新たな恋の予感をしっとりと歌いあげるA面と異なり《追いかけるほど好きじゃないわ》《どっちつかずで苛立つばかり》など挑発的な歌詞が印象的。オリコンや『ザ・ベストテン』はじめ各種ランキングで初のTOP10入りとなった2ndシングル『少女A』にも通じるツッパリ歌謡風で、中低音の歌声にゾクゾクさせられる。

 明菜本人は『少女A』よりも『スローモーション』を好んでいたと『ザ・ベストテン』で公表したのは有名な話だが、そもそも山口百恵の『夢先案内人』を『スター誕生!』で披露してデビューを勝ち取っただけあって、明菜は低くつぶやくような歌い方が得意だったことが、この『条件反射』からも改めてよく分かる。明菜のスタッフも“しっとり系”と“ツッパリ系”の双方で彼女の魅力を感じ取っていたからこそ、『スローモーション』のジャケットは清楚な衣装で真っすぐこちらを見つめる明菜の写真を使いつつ、それをリード曲とする1stアルバム『プロローグ〈序幕〉』では、白のトレーナーを着て、斜に構えガンを飛ばすようなカットを採用したのではないだろうか。

 次に、そこから約3年経った12作目のシングル『SAND BEIGE -砂漠へ-』のB面『椿姫ジュリアーナ』(作詞:松本一起/作曲:佐藤隆/編曲:井上鑑)。もの悲しい笛の音から始まるエキゾチック路線の歌謡曲で、《舞台が済むと売れ残りの ワインの瓶を売り歩く》《笑いながら泣いて 歌い踊る 私は踊り子 愛もない》という薄幸な女性を、わずか19歳にて見事に演じ切っている。それ以前にもつぶやく、またはささやく感じで歌唱するバラードをシングルのB面で取りあげていたが、本作から言葉の説得力が格段に増している

 '85年の明菜は、7作目のアルバム『BITTER AND SWEET』で井上陽水作詞・作曲の『飾りじゃないのよ涙は』をはじめ角松敏生、ASKA、EPO、吉田美奈子など個性的なソングライター提供の楽曲を次々と“明菜流”に歌えるようになり、アイドルというよりもアーティスト色を一気に強めていった。

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