介護の現場で感じる限界もある。
「どうして、あんなに給料が安いのかな。理由を知りたいです。それに、現場で感じるのは『人手不足』。その状況下で必死に働いている人が多いのだからなおさら、お給金もっと上げてよ、と思います。介護は個人的には楽しいけれど、やっぱり大変な仕事ではあります。そのストレスを生活の中で発散できるくらいのお金はあげてほしい。
ヨーロッパは、介護現場への支援がすごく手厚いんです。機器の導入も進んでいて、機械浴などもあります。日本はそれも少ないから結局、介護者が腰を壊すとか、身体に無理をしてしまう。身を削っているわけです。でも給料が安いと、ろくに治療もできない。「ケア側のケア」もちゃんとしたほうが、介護者の心にゆとりができますし、そうすれば相手にもゆとりのある接し方ができて、最終的に、ケアの質も上がると思うんです」
第三者だから優しくできることもある
実際、身内を施設やペルパーに預けるか、自分たちで介護するかは難しい問題だと思う、と安藤さんは言う。
「例えば、夜中におむつに排泄してしまった場合、かぶれた状態でいるより、少しでも早く替えたほうがいいですよね。でも、そこで家族が替えるために睡眠時間を削ってストレスをためるぐらいだったら、第三者が入ったほうがいいと思うんです。円満な介護生活のためにも、家族が休むためのサービスは必要だと思うから。
ただ、事業所やヘルパーさん・介護職の人をどこまで信頼するかは悩ましいし、誰かに頼むには勇気がいると思います。自分の母親が寝たきりになって、おむつも交換しなきゃいけないとなったら、自分でやろうとしてしまう人も多いと思うんですよね。それでも、間に人が入ってくれるだけで楽にはなるはずです」
安藤さん自身も、両親の介護について考えることが増えたそうだ。
「もし親が自分のことを忘れるとか、身体が不自由になったら、やっぱりショックですよ。だから無理なくデイサービスに行ってもらうなり、施設に通うか入ってもらうなり、何かしら第三者を入れるようにはしたいと思います。顔を合わせるたびに“お母さん、忘れてるんだ”とか“動けないんだ”って実感しちゃったら、メンタルがもたないです。そのうえ“何でできないの”、“どうして忘れてるの”と、怒りのほうにシフトしてしまいそう。
そうなったときに、一定の距離感があるヘルパーさんとか介護従事者が間に入ることによって、親への落胆や怒りを直接ぶつけないようにできると思います。逆に介護する側も、何も知らない赤の他人で自分の親じゃないから、仕事だから、優しくできる面があると思うんです」