安藤さんは「自分の家族について、周りに“助けて”って言えない状況がいちばん問題です」と続ける。
「“自分が絶対に看なきゃいけない”、“自分の親がこんな状態なのを人に見られたくない”とか、葛藤があると思いますが、プライドや世間体を気にしすぎて孤独に頑張り続けると、共倒れしちゃうこともあります。そうなるくらいだったら、助けを求めてもいいんじゃないかと感じています。
そして、事前に家族で話すことも大切。私は3人きょうだいですが、親の今後をどうするか、弟、妹と一緒に話したりはするようになりました。全国的に、専門職の人などにもっと気軽に相談できる場所があればいいのになと思います」
介護従事者、そして世間へ
芸能界では、スキャンダルを起こした著名人が介護施設にボランティアに行ったり、介護の勉強を始めたりする事例も少なくない。また、'09年に覚せい剤取締法違反で有罪判決を受けた女優の酒井法子が、かつて刑事裁判で「芸能界を引退し、介護の仕事をやりたい」などと語ったものの、その後、介護と向き合っている様子はなく、世間からバッシングを受けたこともある。
「罪を犯した罰ゲームのように、介護をやろうとする風潮がありますよね。ですが、私たちからしたら、好きで選んでやっている仕事です。それを罰ゲームにされるのは心外ですね。毎回“何なの”と思うんです」
安藤さん自身はプライベートも充実しており、昨年11月22日(いい夫婦の日)には、ご結婚された。パートナーは介護職に従事されている男性。最初はやはり、介護の話で意気投合したそうだ。
「介護に対する“あるある”でわかり合えることが多かったです。介護中にケガが発生しないようにするためにはどうしたらいいのかなどを話したときに、価値観が近かったんです。例えば、夜中に起きてしまう人にはお薬を飲ませてゆっくり休んでもらったほうがいいか、それとも、ご家族が“お薬は飲ませたくない”と言った場合には、その意向に従うべきか。でも、それでもし転倒してしまったらどうするかなど、深い話をしました。共感できる相手って、惹かれますよね」
最後に、新型コロナが再拡大し不安が高まる昨今だからこそ、介護従事者らに伝えたい思いを聞いた。
「こういう時期だし、現場は怖い思いをしていると思います。自分が(ウイルスを)うつすんじゃないかという怖さと、自分がうつされるのではっていう怖さがずっとつきまとう職業ですから。密着して過ごしますしね。これをどうにかしてあげることはできないけれど、みな感染するときはするものだし、自分がいけないんだ、などと思わないで、ぜひ頑張ってほしいなと思います。お金がね、もう少しあれば……。どうにか、ななちゃんの力でならないですか。“介護業界にお金を回せよ”って言ってください」
(取材・文/お笑いジャーナリスト・たかまつなな)
【PROFILE】
安藤なつ ◎1981年1月31日生まれ。東京都出身。身長170cm、体重135kg。介護歴は20年以上。'12年、カズレーザーとお笑いコンビ『メイプル超合金』を結成し、『M-1グランプリ』などで注目を集め大ブレイク。'19年11月22日には自身のブログで、年下で介護職に従事する一般男性との結婚を発表した。
【INFORMATION】
※Youtube『たかまつななチャンネル』では、安藤なつさんへのロングインタビュー全編を公開中です。(https://youtu.be/rei7FXEUdSw)