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人生100年時代。今や日本人のおよそ半分は50歳以上です。「NEOFIFTY」では、これから50代を迎える人にとって、その先にある老後が「終活の始まり」ではなく「新しい人生がもう一度始まる」と思えるように、素敵な生き方をしている人たちの言葉を紹介していきます。

NEOFIFTY -新50代の生き方-

50代で補聴器が必要に──井上順が難聴という現実を受け入れて「変わったこと」

SNSでの感想
「うれしさを頂戴したから、がんばらなくちゃいけない」と語る井上順さん 撮影/佐藤靖彦
目次
  • 原因は耳の酷使だった
  • 両耳に補聴器をいれたら「うそでしょ!」
  • 長生きするために欠かさない“駆け引き”

 前回のインタビューで、失敗を恐れて何もしないより、失敗してもいいから行動することが大切だと話していた井上順さん。後編では、50代で難聴になった井上さんが現実を受け入れて「生まれ変わった」ことについてうかがいます。

*インタビューの前編は『井上順のSNSが人を癒す理由「嫌なことってあるんだろうけど、ぼくには見えない」』

◆  ◆  ◆

 現在、補聴器メーカーのコマーシャルに出演中の井上順さん。59歳のときに補聴器を使い始めたが、最初に耳が聞こえにくいなと気づいたのは50代に入ってすぐのこと。例えば、舞台の練習でセリフの読み合わせをするときに、みんなの声が小さいと感じていたという。

「自分では耳が聞こえにくいとは思ってもいないから、『みんな、声がちっちゃいよ。もっと大きな声を出そうよ! お通夜じゃないんだから』と言うと、みんなが不思議そうな顔をしてね。『あれ? 聞こえにくくない?』と聞くと『いえ、ばっちり聞こえてます』『順さん、耳が遠くなったんじゃない?』なんて言われて。まだ50ちょっとすぎだし、まあ、仕事に支障がなかったこともあって、あまり気にしてなかったですね」

 あるとき歌を歌っていて、音程がとりにくくなったことに気づく。昔は、グラスを指で鳴らすと出るチーン♪ という音がどの音程なのか聴きとてれていた。それも、音を聴いてから、あたりを一周してきても同じ音で歌えるほど。音感がとてもいいのが自慢だった。それなのに、何度グラスを鳴らしても音をとりにくい状況が続くようになった。

「そのうち、歌うのが怖くなってね。イントロが終わって歌い始めるわけだけど、声を出すのが怖い。ちゃんとした音を出せるか、まったく自信がない。コンサートでも、音がものすごく不安だからソロでは歌えない。そこで、40年以上の付き合いになるコーラスのみなさんとユニゾンにして、助けてもらっていました。ユニゾンがうまくいったときのうれしさといったらない。今から思えば、兆候があったんだよね」

 仕事だけではない。プライベートでは井上さんから社交性が減っていくようになる。

仲間内で、ワイワイしゃべっているときにワハハ! って盛り上がるでしょ。だけど、ぼくはわかってないの。今なんて言ったんだろうと思うけど、流れがあるから会話を止められない。ある程度キリがよくなったところで『さっきはなんでウケてたの』と聞く。だけどねえ、だんだんそういう会合に出るのもおっくうになってきてね。

 それで、おい、順、おまえどうしちゃったんだよ! って自分を叱って。それで必ず仕事するときには、難聴であることを伝えるようになりました。じゃないと失礼でしょ。仕事場で、え? え? って聞き返してばっかりだったら、使うほうだって嫌になっちゃうよね」

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