〈秋葉原〉控えめに“営業中”をアピール
JR秋葉原駅へ。駅前近くのおもな建物は消灯されていて周辺は暗かった。
どの路地も通行人はまばらで、歩道脇で裸電球を吊るして菓子類を安売りするワゴン販売に数人の客が集まっていた。暗い街でそのワゴン販売は目立ち、まるで誘蛾灯(ゆうがとう)のよう。のぞき見る限り、商品じたいはそれほど珍しいものとは思えなかった。
明かりはこれほどまでに人を寄せ付けるのか。
小池知事の呼びかけは、人の流れを減らしたいという目的には合致しているに違いない。
しかし、店頭の電気を消して営業するゲームセンターも。客のほうも心得ているようで、消灯を気にする様子もなく店内に吸い込まれていった。
路上ではメイドカフェの従業員が控えめに“営業中”を通行人にアピールしていた。建物が消灯された薄暗い路上で、少し間隔をあけ、さまざまなコスチュームをまとったメイドさんが立っている。
都内では酒類・カラオケを提供する飲食店は休業を求められており、提供がない場合でも営業は午後8時まで。もう、とっくに閉店時間を過ぎている。
「本音を言えば、午後8時以降も店が営業してくれるのはありがたいですね。時給制なので閉められると稼げなくなり、生活に響きますから」
とミニスカートのメイドさんは話す。
別のメイドさんは、
「ふだんより暗いので路上に立つのはちょっと怖い。通行人の表情が見えにくく、向こうから近づいてくると、変な人かもしれないと身構えてしまう」
と眠りの早い夜の街を嫌った。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する