そんなイヤらしい人が住んでいたなんて

 こうした裏収入と、表の顔である会社員としての報酬をあわせてどのような生活を送っていたかといえば、周囲には質素にみえる暮らしぶりだった。

 東京都境に近い市川市内のワンルームマンションの家賃は管理費込みで月約7万円。築十数年と比較的新しいためトイレは温水洗浄便座つきだが、最寄り駅まで徒歩約15分とずいぶん歩かなければならない。

 冒頭の住人とは別の20代の男性住人は少し面倒くさそうに言う。

「容疑者はひとり暮らしだと思いますよ。というか部屋が狭いので家族で暮らすのはまず無理です。駐車場もないので歩くか自転車しかない。そこそこ稼いでいるはずの50代サラリーマンが住む部屋じゃありません。悪いことをして得た金は生活費以外にあてていたんじゃないですか」

 周辺は閑静な住宅街で、複数の近隣住民によると、ここ最近は不審者情報などは聞いたことがないという。

「そんなイヤらしい人が住んでいたなんてショック。どこかヨソに引っ越してほしい」

 と近所の主婦はばっさり。

名誉毀損容疑での摘発は全国で初めて

 女性アスリートを性的な意図で盗撮し、画像や動画をネットなどで拡散する行為は社会問題となっている。

 五輪開催を控え、事態を重くみた日本オリンピック委員会(JOC)など関係団体は昨年11月、被害撲滅を訴える共同声明を発表。

 今年5月には、テレビ局がオンエアした女性アスリートの画像を無断転載したサイト運営者を警視庁が著作権法違反容疑で逮捕。本件逮捕と同日の6月21日には、テレビ番組で放送された水着姿のジュニアアスリートの画像をアダルトサイトに無断転載した36歳会社員を警視庁が逮捕している。

 刑法の名誉毀損容疑での摘発は全国で千葉県警が初めてだった。法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金となる。

 事件は千葉県警サイバー犯罪対策課の捜査員によるサイバーパトロールで発覚した。

「女性アスリートの被害が社会問題化しているのを受けて捜査を開始したのは間違いない」(前出の捜査関係者)

 前述した容疑者の陳腐な説明書きを、専門の捜査員が真に受けるはずがなかった。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する