大沖さんが新型コロナを発症したときの経験を描いた漫画“療養編”の1コマ※記事中の画像をクリックすると全編が読める大沖さんのツイートにジャンプします

療養中は仕事ができないほど苦しかった

大沖:私の場合、月曜に受診しPCR検査を受けて、次の日に電話で陽性だと言われました。それが5月11日です。

若林:調べたところ、その日の東京都の新規感染者数は925人 。私が陽性と診断された日の3倍以上の数です。保健所からの電話は、その日のうちにありましたか?

大沖:ありましたが短時間で、発熱があるかなどを聞かれました。たぶん、病院への入院が必要か判断するためだったと思います。詳しいヒアリングは次の日でした。

若林:症状に変化はありましたか?

大沖:そのころから、運動したときのような熱っぽさを肺に感じるようになりました。宿泊療養ホテルに入所したのはその2日後の金曜からです。

若林:ホテル療養は私が経験した病院療養と異なることが多いと思うので、気になります。

大沖:施設によって違うかもしれませんが、着いてすぐ、名前と部屋番号の書かれた大きな袋を受け取って、自分で部屋に行きました袋の中に同意書や説明書、ペン、医師や看護師と連絡をとるためのガラケー、毎日の血中酸素濃度や体温を入力するためのiPad、体温計、パルスオキシメーター(血中酸素濃度を測る機械)が入っていて。部屋に着いてから、今の状態を電話とiPadで伝えました。

若林:入所日に人と接触したのは、袋を受け取るときだけですか?

大沖:そうです。他のやりとりは、部屋に入ってから電話で行いました。毎日、iPadに血中酸素濃度と体温の数値、それと「咳はありますか」といったチェック項目を入力します。その後に医師か看護師から電話がかかってきて、「熱が下がっていますね」とか「新たな症状は?」といった話をしました。

若林:私の入院した病院は1日3回、看護師が病院食を持ってきてくれました。大沖さんはどのように食事を?

大沖:あらかじめ指定された時間にロビーに行くと、お弁当とマスクが入った袋と、自由にもらえるようになっている水やタオル、ペーパー類があるんです。必要なものを部屋に持ち帰ってお弁当を食べていました。病院は看護師が様子を見に来るのですか?

若林:私の入院先は看護師が頻繁に来てくれて、入院した日と退院前日は、医師から対面で直接、説明も受けました。ただ、夫が入院した病院はナースコールや電話でのやりとりがほとんどだったみたいです。不安だったのは仕事ですね……。私はフリーライターなので、仕事をしないと収入がない。病室でパソコンに向き合っても、すぐに咳が止まらなくなってしまって。

大沖:私も入所の際、仕事道具を持って行きました。次の漫画の構想を練ろうと思っていたので、ネームやラフを描きたくて。ただ、体温と血中酸素濃度は正常値だったんですが、息苦しさとだるさがあったので寝ていました。「何事もなく退所できたらいいな」と考えていましたね。

若林:わかります。私も“仕事より治すほうを優先しないと入院が長引くぞ”と思い、仕事をもらっている媒体に相談すると、みなさん「気にしないで今は休んでください」と気遣ってくださって助かりました。また、私は入院中にかなり症状がよくなったのもあって、入院は3月17日から23日までの7日間で済みました。大沖さんの療養期間は?

大沖:5月14日から17日までの4日間です。退所後も症状は残っていましたが、療養中よりもよくなっていたので、仕事はすぐに再開しました。ただ、嗅覚異常は1か月続きましたね。

若林:人によりますが、退院もしくは施設退所=完治したとは限らないんですよね。私の場合は、退院後も咳が1か月続きました。