シーソーのこぎ方を先生が教える
プールの廃止に伴い、公営プールを使用したり、民間のスイミングスクールに委託したりする学校も増えている。
「民間委託の場合、個人情報の漏洩や、どのように安全に配慮するのかという問題が残ります」(渋井さん)
同じく老朽化に伴い、校庭にあった遊具も次々と姿を消している。Sさんが実情を教えてくれた。
「法改正などもあり安全対策が年々厳しくなっていき、使用禁止にせざるをえない遊具が増えました。シーソーや回転するジャングルジムは、実際に事故が多かったんです」
事故が起これば学校の責任が問われ、裁判に発展することも。渋井さんが言う。
「リスクを考えると最初からないほうがいい、という発想になる。老朽化したら撤去して、新たにつくらない学校が目立ちます」
埼玉県の小学校で30年以上にわたり教壇に立ってきたMさんからは、驚きの発言が。
「最近は遊具で遊んだことのない子どもが増えています。小学1年生の担任になると授業の一環として、シーソーのこぎ方や登り棒の登り方など、校庭にある遊具の使い方をひと通り教えるんです。公園でも遊具を撤去する地域が増えているせいかもしれません」
安全面の理由から消えたものは、ほかにもある。
「理科の実験でおなじみのアルコールランプに代わって、文部科学省はカセットコンロの使用を推奨しています」(渋井さん)
実際、学校ではアルコールランプによる事故が多発し、問題視されてきた。手や髪、衣服などへ引火してヤケドを負うケースのほか、爆発事故や死亡事故も起きている。
「アルコールランプは日常生活ではまず使いません。カセットコンロを使ったほうが実用的だという考え方もあるのだと思います」
と、渋井さん。ただ、理科の実験でカセットコンロの使用が主流になると、“あること”ができない子どもが増えてしまったそう。
「いまどきの子どもはマッチを使えません。触ったことがないので、擦る方法もわからないんです」(Mさん)