加藤先生の心の処方箋
●悩みの本質は変わらない
「『市場型』の悩みは資本主義社会になってからずっとあるし、親子関係などさまざまな問題は旧約聖書に書かれたものばかり。“人類の知恵”と言われる本を読めば全部出ています」
●悩みの解決には地獄を通らなければならない
「自分が認めたくないもの(目をそらした怒りの感情など)を認めていないから悩むわけです。解決するには地獄を通過し、認めたくない真実に気づかなければなりません」
●やっちゃいけない言動はないが、関係性にふさわしくない言動はある
「相手との関係性で“言っていいこと”と“悪いこと”は生まれます。親しい人に愚痴を言ってもいいけど、初対面にはダメ。コロナ禍で人との距離感を見失うと、それがつかめなくなります」
●心のマスクを忘れるな
「自分の人生を活性化するために他者を巻き込もうとする人がいます。つまり、毒を吐く人に巻き込まれるから悩んでしまう。心のマスクをして『さよなら』と言えばいいんです」
ライターが相談してみた
今回取材を担当したライターT、実は人知れず深い悩みを抱えていた。せっかくなので、この機会に加藤先生に相談を……。
ライターT「父に怒りを向ける認知症の母が家の財産を持って家出しました。父は母との復縁を望んでいるのですが、私は財産だけでも取り戻したいと思っています」
加藤先生「長年にわたり抑え込んできた怒りがこの年齢で出てきたから、これは大変。理屈は通じないし、“なぜわからないんだ!”というお母さんの憤りもあなたに向いています。高齢者の感じ方は若い人と違って、理屈に感情が追いついていかない。蓄積した感情がある分、幼児に理屈を言うより難しいです」
加藤先生の言葉で、老齢の母との親子関係の難しさを再認識したライターT。これからが正念場だ──。
《PROFILE》
かとう・たいぞう ◎1938年生まれ。社会心理学者。早稲田大学名誉教授。2009年東京都功労者表彰。2016年瑞宝中綬章受章。ラジオ番組『テレフォン人生相談』(ニッポン放送)に長年出演。『不安のしずめ方』(PHP研究所)など著書多数。
(取材・文/寺西ジャジューカ)