新サービスなど利用者のメリットも

 地銀が統廃合する場合、どのようなパターンがあるのだろうか? 多くは同じ営業エリアで統廃合するが、中には違う営業エリアを持つ地銀同士が提携・統廃合するケースもある。

「同じエリアの代表例、青森銀行みちのく銀行は、往年のライバル地銀同士。この2銀行が2024年4月をめどに合併することを発表。大きな話題となりました」

 一方で、福岡県で営業していた福岡銀行は、2007年にふくおかフィナンシャルグループ(以下、ふくおかFG)を設立。熊本県を基盤とする熊本銀行や、長崎県が基盤の十八親和銀行をグループ傘下に入れ、九州エリアで巨大なサービスネットワークを作り上げている。

 とはいえ基本的には、前述のように同じ都道府県内で統廃合を行うケースが多い。そのメリットは何だろうか。

「いちばんのメリットは、銀行運営にかかるコストが削減できること。同じエリアにある店舗を1つ閉鎖するだけでかなりのコスト削減になります。ただし顧客にとっては、最寄りの店舗がなくなるデメリットも

 では営業エリアが重ならない地銀同士での統廃合や提携は、どんな意味があるのか。

「営業エリアが拡大することで、銀行グループとしての存在感が絶大に。経営基盤も安定するので、新しいサービスを提供しやすくなります」

 例えば前出のふくおかFGは、2021年5月にスマホアプリで利用できるネット銀行「みんなの銀行」を運用開始。地方銀行といえば地元の方が利用する、という常識を覆した。こうした例が増えたら、私たちもますます地銀を利用しやすくなるかもしれない。

自動支払い・振り込みは注意が必要

 では実際に自分が利用する地銀が統廃合したら、どうなるのだろうか。ここから先は、金融や経済の流れ、消費者への影響に詳しい愛知産業大学教授の奥田真之さんに話を聞いた。

「統廃合する際、顧客への影響はなるべく出ないよう配慮されます。通帳やカードは、しばらく現行のものが使えると思いますよ」

 ただし振込時などに使用される「金融機関コード」は新しくなるため、給与や光熱費の振り込みや引き落としを設定している方は注意が必要だ。

 統廃合によって、客を取り合うライバル銀行がなくなった場合、銀行のサービスが悪化する可能性もあるのでは、という懸念もあるが……。

「メガバンクやネット銀行など競合相手が多いので、サービス悪化は起こりにくいはず」(奥田さん、以下同)

 預金金利がさらに低くなる、ローンが借りにくくなるなどのデメリットはあまり心配しなくていいようだ。

地域の活性化に期待

 今後の地銀に期待できる役割について聞いた。

「昔の地銀は地域の顧客同士のご縁をつないだり、入院先までお金を持ってきてくれたりと、きめ細かな対応を行っていました。今後地銀の経営が統廃合で改善すれば、こうした『丁寧な対応』が復活するかもしれません

 地銀は近年、地元企業への経営コンサルや他エリアの取引先企業の紹介など、地域の企業を応援する動きが見られる。地元に元気な企業が増えれば、雇用が安定するので若い世代もとどまってくれる。地銀の統廃合によって、再び地域が活性化するかもしれない。