在宅医療の地域格差問題
在宅死亡率地域間格差がわかる「人口動態統計」を発表する厚生労働省は、同時に「全国在宅医療会議」によって在宅医療推進の指針への取り組みを進めている。
在宅医療への足かせとなる、地方が抱える少子高齢化、人口減少、医師不足、過疎化などの問題を、日本医師会や病院協会などの関連団体の協力を得て解決していくための普及・啓発に努めるのだ。
自宅で最期を迎えるためには、365日24時間対応可能な医師などの体制が理想だが、全国的な整備は容易ではない。自宅での看取り率最下位の大分県の「医療の現状」では最大の問題として少子高齢化による人口減少が嘆かれる。これを筆頭に医療の過疎化が進行した。結果、希望とは違って大分県民の半数以上が自宅で最期を迎えることは実現困難であると考えていることがわかった(大分県在宅医療に関するアンケート調査結果より)。
この理由としては「24時間体制で相談に乗ってくれる所がない」や「訪問診療してくれる医師がいない」という不安の声が上がっている。
大分県のように、人口10万人あたりの在宅医療対応医療機関数が全国平均を上回るにもかかわらず、それが実際には自宅での最期に結びついていない都道府県は少なくない。
自分らしい逝き方の選択
昭和26(1951)年の自宅での死亡が8割なのに対し病院での最期は1割程度であった。これが完全逆転したのは平成17(2005)年。しかし2000年前後からは介護老人保健施設や老人ホームで最期を迎える人が増え始め、病院での死亡率は減少を始める。少しずつではあるものの「自分らしい逝き方」を選択できる状況が生まれつつあるともいえるだろう。そして新型コロナをきっかけに、われわれが「在宅死」を願う気持ちはより強くなってきている。
2021年に公表された日本財団の「人生の最期の迎え方に関する全国調査結果」では6割近い58.8%もの人が「自宅」での最期を希望する。「自分らしくいたい」「家族に囲まれていたい」という気持ちと、住み慣れた安心のできる環境でリラックスして最期を迎えたいと願う人は増え続けているのだ。
その解決のカギは、まちがいなく在宅医療にある。地域格差はあるものの、情報収集や事前準備によって不足している内容を補うことができる。たとえば、かかりつけ医との関係をはじめ、介護保険制度のケアマネジャー、介護士、ヘルパー等のサービスを組み合わせて、終末期ケアへの準備を整えることなどだ。
(取材・文/オフィス三銃[小山御耀子])