「一生懸命」だけじゃない!

 最新作は1月19日公開の映画『なん・なんだ』。はからずも夫婦の物語だ。

「こっちの夫婦は、結婚してもうすぐ40年。自分で言うのもなんだけど、ツッコミどころがいっぱいある映画です

 初老にさしかかった三郎(下元史朗)と美智子(烏丸せつこ)。ひとり娘がいるが結婚して家を出ており、ふたりで神奈川県にある団地で暮らしている。日々の会話はおざなりで、すっかりよどんだ空気が流れている。ある日、カルチャースクールに出かけたはずの美智子が事故に遭う。しかも、なぜか遠く離れた京都で……。

映画『なん・なんだ』は2022年1月19日公開。三郎(下元史朗)と美智子(烏丸せつこ)は結婚してもうすぐ40年。ある日、美智子が事故にあったことから、隠していた「秘密」が明らかになる…… (C)なん・なんだ製作運動体

 実は美智子には夫が知らない恋人(佐野和宏)がいて、しかも昨日今日の関係ではなかった。長年にわたって逢瀬(おうせ)を続けていたのだ。

「ダンナが粗野で乱暴な元大工。浮気相手のほうは金持ちの医者。しかも私がやってる美智子の過去とか、いちいち構図が古いよね。男の脚本家がアタマで書いた話ですよ。

 いちばん嫌だったのが、私が隠れて何十年も浮気していた最初のきっかけ。その原因をひとりでべらべらしゃべるシーンが気持ち悪い。あれはありえないよ。仮にありえたとしてもセリフや撮り方を変えるとか、もうちょっと工夫があるでしょう?」

 事故による昏睡状態からようやく目覚めた美智子が切々と夫に心情を打ち明けるシーンだが、烏丸の舌鋒(ぜっぽう)はまったく容赦ない。

“あたし、死のうと思ったの……”から始まるわけ。“気持ち悪ッ”と思って。“心と身体って、そんなに簡単に切り離せないの”とか言うじゃん、キモーーですよ(笑)。

 “私の40年返して”ってセリフもあったんだけど、さすがに言えなくて自分で “40年何だったんだろうね”ってセリフに変えました

 主演女優が出演作について、ここまではっきり言うのは珍しい。

「やっぱり、“すばらしい映画でした。一生懸命やりました”って言うだけじゃ、お客さんに失礼だから。

 ツッコミどころもぜんぶ話して、“烏丸がここが気持ち悪かったって言うけど、ホントかな!?”って、男の人でも女の人でも見てほしい。

 映画館に見に来てもらって、“烏丸いいじゃん、お前の言うとおりだ”って、そういう宣伝をしようと。まる一日考えて決めたんだ(笑)

(取材・文/川合文哉)

(C)なん・なんだ製作運動体

【作品情報】
映画『なん・なんだ』
出演:下元史朗 烏丸せつこ/佐野和宏 和田光沙 吉岡睦雄 外波山文明/三島ゆり子
企画・監督:山嵜晋平
プロデューサー:寺脇研
脚本:中野太
音楽:下社敦郎
配給・宣伝:太秦
1月15日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開
〈公式サイト〉nan-nanda.jp
〈Twitter〉@nan_nanda0115

《PROFILE》
からすま・せつこ/1955年2月3日、滋賀県生まれ。クラリオンガール(6代目/1980年度)で芸能界デビュー。映画『四季・奈津子』『マノン』に主演して人気絶頂の1982年、『駅 STATION』で知り合った21歳上の映画プロデューサーと結婚。2001年に離婚し、2014年に再婚。近年の出演作に映画『64-ロクヨン-』『祈りの幕が下りる時』『教誨師』『明日の食卓』、Netflix映画『彼女』、NHK連続テレビ小説『スカーレット』など。主演映画『なん・なんだ』に続いて、2月4日『夕方のおともだち』が公開される。
〈公式プロフィール〉http://t-artist.net/karasuma-setsuko.html