「裸足の季節」は“素”の象徴、「制服」が今も愛される人気曲になったワケは

 そして、10位にはデビュー曲「裸足の季節」(作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎、編曲:信田かずお)がランクイン。こちらは、本格ブレイク前ということもあり、シングルセールスは22番手だが、現在はそれよりも、はるかにヒットしている。こちらも聖子の歌声が元気いっぱいで、(父親からの反対や事務所決定の難航など)デビューまでの長い道のりを思うと、気持ちが高揚しているようにも聞こえるほどだ。

これは本当にいい曲ができたと思っています。聖子に合わせて意図的に作ったのではなく、作曲の小田さんが歌いながらふっと出てきたメロディーを歌にしています。でも、小田さんのメロディーは洋楽っぽくもあるので、歌ってみると音域が広くて難しいですよね。それと、アイドルの歌は1コーラス目と2コーラス目で間奏がきっちりあることが多かったのが、この歌はすぐさま2コーラス目にいくのも、新鮮でいいと思いますタイトルは、自分が小さいころ、ずっと裸足で過ごしていたことから、着飾らない“素”の状態の象徴として、『裸足の季節』と名づけました

 ちなみに、作詞を手がけた三浦徳子からは当初、「ハイヌーンは熱く」というタイトルが出されていたようで、発売前に「裸足の季節」に変更されたとのこと。タイトルひとつで、楽曲に青春を感じるか、情熱的な恋愛を感じるか異なるが、「こうも変わるのか」と改めてタイトルの重要性、ひいては若松氏の手腕のすごさを実感させられる。

 次に、シングルのカップリング曲を見ていくと、上位から3位「SWEET MEMORIES」(「ガラスの林檎」B面,のちに両A面)、14位「制服」(「赤いスイートピー」B面)、19位「蒼いフォトグラフ」(「瞳はダイアモンド」の両A面)、26位「レモネードの夏」(「渚のバルコニー」B面)、そして32位「Eighteen」(「風は秋色」の両A面)と、TOP40に5作もランクイン。ユーミン作品が3作入っているのも興味深い。

 特に、14位の「制服」(作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂、編曲:松任谷正隆)は今でも卒業シーズンになると、柏原芳恵「春なのに」や斉藤由貴「卒業」などのヒット・シングルと並んで、ラジオやテレビで流れるスタンダード曲となっている。卒業時の切ないエピソードと、軽快なメロディーの組み合わせが絶妙だが、これもA面候補だったのだろうか。

いえ、『制服』は、シングルA面の『赤いスイートピー』と争ったわけではなく、まず『赤いスイートピー』をA面として固めた後に、B面曲として書いてもらいました。聖子の場合、A面は(こちらから指示したこともあり)制作に力が入ったけれど、B面は各々のクリエイターに、自由につくってもらっていました。その自由さが結果としていい歌になっちゃうんですから、みなさん本当にすばらしい才能の持ち主なんだと思います。私のところで、ボツにしたものは、ほとんどなかったはずです

 ちなみに、'84年にはシングルB面曲を集めたベスト盤『Touch Me,Seiko』が発売されているが、当時、B面コレクションがチャートの1位になるというのも史上初のことだった(累計売上約34万枚)。