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人生100年時代。今や日本人のおよそ半分は50歳以上です。「NEOFIFTY」では、これから50代を迎える人にとって、その先にある老後が「終活の始まり」ではなく「新しい人生がもう一度始まる」と思えるように、素敵な生き方をしている人たちの言葉を紹介していきます。

ドラマ・映画・舞台

高橋克実さん、“ミーハー心”と出会いに支えられた日々を振り返りつつ、今後の目標は「特にないんですよ(笑)」

SNSでの感想
高橋克実さん。取材は終始和やかに進みつつ、高橋さんの絶妙な発言により、たびたび爆笑の渦に包まれた 撮影/齋藤周造
目次
  • 地元から飛び出て念願の東京へ、『ぴあ』を片手に“オタ活”する日々
  • 小劇場での活動が転機に。今後の目標は「特にないんですよ」

「映画やドラマが昔から大好きだったんです。いわゆる“オタク”ですね。家業を継ぎたくない、その一心で新潟から上京してきました。金物屋を営んでいた両親からは、“東京に行って何すんの!?”と、ほとんど勘当状態に。そんな中でも、実際に東京に出てきた昭和54年(1979年)。あのときの興奮は、今でも忘れられないです」

 今年4月に61歳を迎えた俳優・高橋克実さんは、テレビドラマ『ショムニ』シリーズ(フジテレビ系)で演じた人事部長役で一躍、人気を博し、ドラマや映画、舞台など、さまざまな話題作に出演する名バイプレイヤーの一人。

 高橋さんといえば、バラエティ番組『トリビアの泉〜素晴らしきムダ知識〜』(フジテレビ系)で見せた八嶋智人さんとのシュールな司会姿を連想する人も少なくないはず。俳優としてだけでなく、MCやキャスターとしてもマルチな才能を発揮する高橋さんが、'22年10月14日に公開される『向田理髪店』で、映画初主演を飾ることに

 “好き”という気持ちから飛び込んだ世界で、今もなお出演作の絶えない人気俳優となった高橋さん。その半生をたどりながら、上京してから今までのご自身の気持ちを、ありのままに語ってもらった。

◇   ◇   ◇

地元から飛び出て念願の東京へ、『ぴあ』を片手に“オタ活”する日々

 初主演となる映画『向田理髪店』で演じた向田康彦は、さびれた元炭鉱町「筑沢町」にある理髪店の店主。客は近所に住む顔見知りばかりで、仕事が終われば、同級生とスナックに集まり町のグチを言い合う日々──。そんなある日、東京で働いていた息子の和昌が突然、会社をやめて帰郷し、「店を継ぐ」と言い出すところから物語は始まる。

「東京に出ていった息子が帰ってくる。脚本をいただいたとき、最初に感情移入したのは息子のほうでした。“ああ、ちょっと自分と似てるなぁ”と思って。僕も親父にあんな生意気なことを言ったな、こういうことで揉めたな、とか思い出しましたね。僕の実家も新潟で金物屋をやっていたので、小さいころは店番の手伝いをしたものです。でも金物屋って、毎日忙しくお客さんが来るようなお店ではないんです。ただ近所の人がお茶を飲んで、しゃべって、満足したら帰る。みんな何も買わないで帰るなんて、普通のことでしたね(笑)。

 そうこうしているうちに、高校に上がると、なんとなく僕が店を継ぐ雰囲気になっているのを感じたんです。でも、それだけは絶対に嫌だった。“地元は面白くないな、なんとか逃げよう……そうだ、東京に出たら何か変わるんじゃないか!?”って。いま思うと、本当に愚かな考えだったと思います(笑)」

 そんな高橋さんが、高校3年生のときに突如、両親に放った言葉は「いろんなことを考えたんだけど、(僕は)東京の大学に行ったほうがいいんじゃないかな」。突拍子もない提案は、もちろん最初から受け入れられることはなかったが、「1年だけ」という約束で東京の予備校へ通う許可がおりる。

「普通は、大学受験をするためにもっと前から準備するんですけどね。あくまで僕は東京に出たい、ただその一心でしたから。当時、寮も完備された予備校があって、その寮に住みながら予備校に通うということは自分の中で決めていたんです」

「浪人は口実で、東京に行けさえすればよかったんですよね〜ハッハッハ!」と、いたずらっぽく笑う 撮影/齋藤周造

 高校の卒業式を終えた数日後、すぐに東京での生活をスタート。

「親元を離れた自分だけの暮らし。自分だけって言ったって寮ですけど、あのときの胸の高鳴りは忘れられません。ついに憧れの東京に出てきて、自分のなかでいちばん衝撃な年でしたから。“よしよし、うまくいったぞ!”なんて思っていました(笑)。

 もともと映画やドラマ好きだったので、毎日のように情報誌の『ぴあ』を片手に映画を観に行ったり、ロケ地巡りをしたり。吉祥寺にある井の頭公園に行って、『俺たちの旅』('75年・中村雅俊主演ドラマ)の、このシーンはここで撮影したんだ! とか、もうとにかく楽しくてね

 夢の東京生活を満喫しているあいだに、時はあっという間に過ぎていった。1年だけという約束だったはずが、気づけば2浪してしまう。

「何浪しようが関係ないですよね、だって当時の僕は、ずっと東京にいることが目標だったんですから(笑)。でも、さすがに“ちゃんとした仕事をしろ”と、両親からも言われるように。そこで浮かんだのが、“映画の世界に関わりたい”という思いでした。どうしても出たいというわけでもなかったから、スタッフでもエキストラでも、なんでもよかったんです。自分が子どものころに見ていた、成田三樹夫さんや佐藤慶さん、石橋蓮司さんや蟹江敬三さん……作品の脇を固める渋い俳優のみなさんに、どこかで会えないかなっていうミーハー心が湧き出たんです

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