評論家・宮崎哲弥さんのインタビュー記事に触発され、編集部の先輩と一緒に「日常会話に上級語彙(ごい)を取り入れてみよう計画」をスタートしました。ボキャブラリーを増やさなきゃと思っていたところ、さっそく(今さら?)覚えた故事成語です。

 先日、朝ドラ『舞いあがれ!』で共感したセリフを紹介しましたが、そのシーンに見られる作家と編集者の関係について言及した、歌人の俵万智さんによるツイートが話題になりました。その投稿文の抜粋がこちら。

《編集者の無茶ぶりで、殻をやぶれることはある。啐啄(そったく)という語を思う》

 PCで「そったく」と入力してもなかなか正しく漢字変換されませんでしたが、「啐」は鳥のヒナが孵化(ふか)するために卵の中から殻を破ろうとすることで、「啄」は母鳥がそれに応じて外側から殻をついばむという意味。両者の息が合わないとヒナは無事に生まれてこないことから、禅の世界では弟子が悟りを開こうとする時期を師匠が察知し、成長や学びのきっかけを与える大切さを表す「啐啄同時」という言葉があるそうです。

 人が育ち、人を育てるのもタイミングが重要。編集の仕事の面白さとやりがいに目覚め、体力もみなぎっていた30代のころに当時の上司がチャレンジングな企画を次々に任せてくれたことがありました。あれが啐啄だったのかなぁと振り返りつつ、その恩を伸び盛りの後輩に返すことが務めだと思って身が引き締まっております!(純)