『ギザギザハートの子守唄』用の歌詞が竹本孝之のシングル曲に使われていた!

「ひとりじゃいられない」の歌詞が、(本来それ用に作詞した)「神様ヘルプ!」のメロディーには合わないというくだりで思い出したのか、ここで売野から衝撃の発言が飛び出した。

「さっき、もともとあった『ギザギザハートの子守唄』のメロディーにあわせて、俺が書いた歌詞がボツになったことまでは話したよね……(インタビュー第1弾参照。採用されたのは康珍化さんの歌詞で、出だしの《ちっちゃな頃から悪ガキで 15で不良と呼ばれたよ》のインパクトが強烈だった)。実は、その続きがあるんだ。

 宙に浮いてしまった自信作をどうしようか、日の目を見させたいなと考えに考えた結果、CBS・ソニー(当時)の酒井政利プロデューサーにご相談したところ、預かっていただけるということになって。後日、酒井さんがプロデュースされている歌のうまいアイドルの方の新曲『週末(ウィークエンド)ララバイ』として、新たなメロディがついて復活することになったんだ。

 作曲は甲斐バンドの甲斐よしひろさん。甲斐さんはこの作品をものすごく気に入ってくださり、いまでもご自身でカバーされてライブで歌われ続けている。酒井さんと甲斐さんには心から感謝しています

 なんと! 「週末ララバイ」は、竹本孝之の通算9作目のシングルとして'84年3月にリリースされた楽曲で、出だしの歌詞 《海岸通りのこの店で/初めてお前と恋に落ち~》は、確かに「ギザギザハートの子守唄」のメロディーで最初から最後までそのまま歌える!!

 ただ、「ギザギザ~」のアクの強いメロディーに乗せると、「週末~」の歌詞に流れる切ない感情の機微は消えいってしまいそうな気もする。その点、実際に発売された竹本の「週末ララバイ」は、歌詞と緩急のあるロッカ・バラードが見事にマッチしている。だからこそ、甲斐も気に入って歌い継いでいるのだろう。

「ギザギザハートの子守唄」にこんな後日談があったとは……!

 それにしてもチェッカーズは、売野がシングル曲中心に歌詞を手がけていた初期も、その後のメンバーによるセルフ・プロデュースの時期も、切なさと不良性が同居した作風が一貫している。「Song for U.S.A.」など、彼らのキャラクターに寄せた提供作もあっただろうが、基本的にはチェッカーズへのどの提供作も、売野雅勇ワールドのど真ん中にあるような作風だこの2組が出逢ったのは、とても幸運であっただろうし、どこか運命さえも感じさせる。だからこそ、今なお、人々に愛され続けているのだろう。

(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)

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【PROFILE】
売野雅勇(うりの・まさお) ◎上智大学文学部英文科卒業。 コピーライター、ファッション誌編集長を経て、1981年、ラッツ&スター『星屑のダンスホール』などを書き作詞家として活動を始める。 1982年、中森明菜『少女A』のヒットにより作詞活動に専念。以降はチェッカーズや河合奈保子、近藤真彦、シブがき隊、荻野目洋子、菊池桃子に数多くの作品を提供し、'80年代アイドルブームの一翼を担う。'90年代は中西圭三、矢沢永吉、坂本龍一、中谷美紀らともヒット曲を輩出。近年は、さかいゆう、山内惠介、藤あや子など幅広い歌手の作詞も手がけている。

【INFORMATION】

“売野雅勇 作詞活動40周年記念 オフィシャル・プロジェクト MIND CIRCUS SPECIAL SHOW「それでも、世界は、美しい」”開催!

・日時:2023年7月15日(土) 16時開場/17時開演
・会場:東京国際フォーラム ホールA
・料金:全席指定 税込15000円
・音楽監督:船山基紀
・出演:麻倉未稀 / 稲垣潤一 / 荻野目洋子 / 近藤房之助 / さかいゆう / 杉山清貴 / 東京パフォーマンスドール(木原さとみ 他) / 中島愛 / 中西圭三 / 中村雅俊 / Beverly / 藤井尚之 / 藤井フミヤ / MAX LUX / 望月琉叶 / 森口博子 / 山内惠介 / 山本達彦 / 横山剣 ほか(50音順。都合により出演者が変更になる場合あり)

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