竹雄に「ずぎゃん」と言わせた綾の神対応

 人生はいい時ばかりではない。だけど懸命に生きていれば、大丈夫。そう思えたのが18週の峰屋、そして綾だった。分家3人衆もその働きを認めてくれていて、奉公人たちも「綾さまのせいじゃない」と言っていた。そして何より、竹雄がいる。この先には、必ず光がある。そう思わせてくれるのが朝ドラだと思う。

 綾と竹雄、これからどうなるのだろう。家と土地を売ったら多少は金も残るだろうと言ったのは、分家3人衆の紀平(清水伸)。「おまんらあ、2人なら、どこへ行ったち、やり直せるじゃろう」と言っていた。

 そのとおり。だって綾だ。その力量に感服したのは、腐造が起きる前だった。ネット界で話題になった、竹雄が「ズギャン!」と言った場面。寿恵子と東京で再会した万太郎も「ズギャン!」と言っていたと話題だったが、それより何より、綾の神対応こそ「ズギャン!」だと思う。

 2人は酒を飲んでいた。綾の長年の夢である新しい酒ができていて、「風味もあって、味も爽やか」と綾。竹雄が「そうじゃね、柑橘(かんきつ)のような」と言うと、綾が「柑橘! うん!」。打てば響き合う「酒造りトーク」の満ち足りた気持ちからだろう、竹雄は「幸せじゃのう」と言う。そして幸吉(笠松将)の名を口にする。「昔、幸吉に妬(や)いたことがあるき」と。

『らんまん』で酒造り職人の幸吉を演じる笠松将 撮影/廣瀬靖士

 ここからの綾がすごかった。竹雄をまじまじと見て、「え、なんで? 幸吉は村に奥さんもおるがやに」と返す。「そやけど、さらわれるかと思った」と竹雄が言うと、こう返した。「ばかじゃねえ、私はずっとうちの酒と蔵に恋しゆうがよ。惚れた人間はひとりしかおらん」。竹雄、ここで「ズギャン!」。