イントロ縮小傾向は2022年で下げ止まりか

──それ以降のイントロはどう変わっていくんですか?

’00年代になって、一気にイントロが短くなるんですよね。バンドブームが終わったこともありますが、大きな要因は“携帯電話の普及”と“着メロ・着うたの流行”なのかな、と思ってます。

 前編でもお伝えしたとおり、当時自分は着メロを販売する会社にいたんですが、イントロではなくみんなサビに注目していた時代でした。その結果、イントロに対する注目度が下がり、どんどん短くなっていったんじゃないか、と思います

 今イントロクイズを出題しても、’00年代の楽曲はかなり正答率が低いんですよ。それくらいサビが重視されていた時代でしたね」

──なるほど。確かに、そのころは子どもでも着メロ設定していましたね。

「ですよね。’00年代のヒットチャートは、オリコンよりもレコチョクランキングのほうが正確だと思うくらいですね。握手券でCDを売る文化も出はじめたころですし。

 この後、スマホに切り替わってもイントロ秒数は減り続けているのが実際のところです。“本当にイントロが短くなってるのか”と、半ばキレぎみで始めた調査でしたが、実際どんどん短くなってましたね(笑)

イントロ秒数は年々短くなるものの、直近の下げ幅は極端に少ない

──この背景としては、どのような要因があるのでしょうか。

サブスク型音楽配信サービスの流行はあると思います。CDの時代って1枚いくらの世界だから、借りたり買ったりしたら最後までちゃんと聴くじゃないですか。

 でもサブスク型のアプリケーションだと自由に次の曲にスキップできるんですよね。だからアーティスト側も飛ばされないように、"歌い出し"から始めることでインパクトをつけるようになったんだと思います」

──そう言われると、私もピンと来なかったらスキップしちゃいますね。

「そうでしょ。日本で最初にサブスクでヒットした曲は、あいみょんさんの『君はロックを聴かない』(2017年)だといわれていますが、これ以降は特にイントロがない曲が増えているんじゃないかな。

 ただ一方でグラフを見ていただくと、2020年~2021年では2.1秒も平均イントロ時間が短くなっているのに対して、2021年~2022年では0.4秒しか減っていないんですよ」

──本当だ! 下がり幅が圧倒的に短くなってますね。

「そうなんですよね。特に’22年のTOP100にはAdoさんの曲が10曲もランクインしていて、うち8曲がイントロ0秒~2秒と、ほぼ歌い出しから始まります。それなのに、全体のイントロ時間の平均はほとんど変わっていないんです。

 これを見ると“歌い出しでインパクトをつける”という手法が限界に来たのかもしれないな、と。イントロが短くなった中でも、前編でご紹介したOfficial髭男dismさんや、あいみょんさんは多くの曲で長めのイントロを用いていますし、今後は“声”とは違った手法でイントロにインパクトをつけるようになると思いますよ

──なるほど。ではイントロ業界的には、まだまだ楽しめる余地があるわけですね。

「逆に楽しい時期ですよね。“イントロの秒数が減る”ということは、イントロに注目が集まっていることの証明でもありますから

 だからサブスク型音楽配信サービスは逆に追い風だと思っていて、着メロと違って最初から聴けるのでイントロがより重要視されるようになるんじゃないかな、と思いますね」