今年も12月31日に行われる予定の第72回『NHK紅白歌合戦』。今やヒット曲の大半が定額制ストリーミングサービス(いわゆる“サブスク”)に集中している一方で、演歌・歌謡曲が流れる地上波番組の減少、さらに、ジャニーズやK-POPなどボーイズグループの激戦化など、何かと動きの激しい音楽業界だが、いったい紅白歌合戦はどうなるのだろうか。
そこで、長年にわたる紅白ウォッチャーの第一人者であるカーシー、さまざまなボーイズグループを幅広く見つめている音楽ライターの新亜希子、そして、記録と記憶に残るヒットをかけ合わせたチャート分析を行う音楽マーケッターの臼井孝が座談会を開き、今年の紅白を大胆に予想してみた。(なお、この座談会の実施後、五木ひろしの不出場が発表されたため、一部が事実と異なる予想になっている点はご了承願いたい)
第1回は、紅組の出場者について三者がアツく語った。(聞き手/ミュージックソムリエ協会・高安紗やか)
※(初)は初出場、(再)は再出場、それ以外は連続出場での予想
カーシー 予想:
AI(再)/あいみょん/石川さゆり/Awesome City Club(初)/上白石萌音(初)/坂本冬美/櫻坂46/天童よしみ/東京事変/TWICE(再)/NiziU/乃木坂46/Perfume/日向坂46/松たか子/松田聖子/MISIA/水森かおり/milet/YOASOBI/LiSA/Little Glee Monster
新亜希子 予想:
AI(再)/あいみょん/石川さゆり/Uru(初)/AKB48(再)/Aimer(初)/上白石萌音(初)/坂本冬美/櫻坂46/島津亜矢(再)/天童よしみ/NiziU/乃木坂46/Perfume/日向坂46/松田聖子/MISIA/水森かおり/八代亜紀(再)/LiSA/Little Glee Monster/緑黄色社会(初)
臼井孝 予想:
AI(再)/あいみょん/Ado(初)/石川さゆり/AKB48(再)/Awesome City Club(初)/坂本冬美/櫻坂46/天童よしみ/東京事変/NiziU/乃木坂46/Perfume/日向坂46/松田聖子/松任谷由実(再)/MISIA/水森かおり/YOASOBI/LiSA/Little Glee Monster/緑黄色社会(初)
再出場が予想されるAIは“NHK向き”
──まず、紅組で予想した22組、全体のポイントや感想はいかがですか。
カーシー(以下「カ」):僕は毎年ホームページで各50組の予想順位をつけているのですが、今年も、ボーダーラインあたりが難しいですね。単純に自分の予想順位どおりではなく、番組の構成も考慮して選びました。
新:私も、昨年の初出場組のうち、どのくらいが今年も連続出場するのか、あるいは、周年などの節目のアーティストをどうするのかという点で、とても迷いました。また、今やCDセールスだけで決まる時代でないので、どのヒット指標を見るべきなのか悩みましたね。
臼井(以下「臼」):僕は、紅白出場には、セールスや知名度も重要なうえ、NHK側がメーカーや事務所について絶妙なバランスをとっていることを意識して選んでいます。セールス的にはこの人だろうけど、メーカーや事務所の枠数で考えたらこの人かな、とか(笑)。
──それにしても22組の予想のうち、AI、あいみょん、石川さゆり、坂本冬美、櫻坂46、天童よしみ、NiziU、乃木坂46、Perfume、日向坂46、松田聖子、MISIA、水森かおり、LiSA、Little Glee Monsterの15組が三者一致しているのはさすがですね~。AIさんは、みなさん「再出場」の予想なんですね。
カ:下半期の朝の連続テレビ小説(以下、「朝ドラ」)の主題歌ですからね。三浦大知さんとのコラボも魅力的です。NHK向きなキャラクターだと思います。
AdoやAKB48、松たか子に要注目!
──そのほかの注目ポイントはどこですか?
臼:僕は、Adoさんの初出場を予想しました。今年『うっせえわ』の大ヒットで、情報番組や音楽番組に声とアニメキャラクターだけで大量に出演してきたので、このタイミングで本人なり、あるいは昨年のGReeeeNのようにモーション・ピクチャーなりで登場すれば、インパクトがあると思います。1995年には岡本真夜さん、そして昨年のYOASOBIなど、紅白を地上波初歌唱としたブレイク・アーティストもいますよね。(Adoの)所属レコード会社であるユニバーサルミュージックは、会社をあげて紅白出場を目標としていることも考慮しました。
新:私はAKB48の復活に期待しています。今の新曲『根も葉もRumor』がパワフルなロックダンスで、原点回帰でありつつ、安定の坂道グループ(乃木坂46、櫻坂46、日向坂46)に反逆するかように頑張っていますから。正直、出場は微妙かもしれませんが、坂道系とのバランスを考えて出てほしいと思っています。
臼:僕も再出場にAKB48を選びました。AKB48のほか、水樹奈々、福田こうへい、丘みどりなど、2010年代の紅白に貢献してきた老舗系のキングレコード所属組が昨年、そろって紅白から消えたので、今年は誰か1組は入れるのではと思います。
カ:僕自身は、あまりメーカーや事務所枠を気にせず、思いきって、紅組の松たか子さんと白組のSTUTSのコラボを予想してみました。松さんは紅白経験も少なくないし、STUTSも実は3年前に紅白のオープニング音楽を担当、さらに、星野源さんとも2度ステージで共演しており、脈ありだと判断しました。主題歌を担当したドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)も話題になりましたよね。
初出場の予想はかなり難しい
──続いて、初出場の方を見てみましょうか。みなさんはAdoさん、Uruさん、Aimerさん、上白石萌音さん、緑黄色社会、Awesome City Clubを予想されていますね。
カ:特に、上白石萌音さんは、紅組の司会兼出場歌手でもおかしくないと思います。10月の特番『わが心の大阪メロディー』(NHK)も決まりましたよね。大河ドラマにも出たことがあり、この後、11月から始まる朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の主演もあるので当確かなと。万一、不出場だとしても、審査員など何らかの形では出てほしい。
新:妹さん(上白石萌歌。歌手活動時のアーティスト名はadieu)との共演もあれば面白いですよね。日本人全員に愛されそうな彼女のキャラクターもバッチリ。オリジナルもよし、童謡や昭和歌謡のカバーもよし、何でも歌えるかと思います。
──緑黄色社会は、新さんと臼井さんが挙げていますね。
臼: 4人組男女混成バンドですが、2年がかりで配信ヒットしている『Mela!』などは、紅白の1曲目として元気にスタートするのに最適な感じがします。歌もうまくて大衆性のあるバンドサウンドの枠として予想しました。昨年に初出場して、オリンピックの閉会式にも出たmiletさんや、楽器を持たないパンクバンドのBiSHも予想に入れたくて悩みました。
新:私も、緑黄色社会、Uruさん、Aimerさん、miletさんと、それぞれタイプは異なるのですが、みなさん歌がうまくて、メッセージ性もあり、ヒット実績もあるので、生の歌声でじっくり聴かせてほしいです。この4人を入れるために予想からはずしてしまったYOASOBIも、出るとは思うのですが……。
カ:でも、YOASOBIなら、“あれだけ大ヒットしながら出ない”という可能性もありますね。あと、僕はAwesome City Clubを紅組出場メンバーとして選んでいます。男女混成で、男性ボーカルがメインのバンドですが、紅組のほうが出やすいかなと思って。今回の紅組の初出場や2回目出場の枠は、いろんな考え方ができるので、誰が出るのか難しいですよね。
──以上、紅組の予想でした。確かに、坂道系の46グループは3組が有望なのに、AKBなど48グループが1組も出ないのはバランスが悪くなりますね。とはいえ、このところ注目される『うっせえわ』のAdoさん、閉会式のmiletさん、『鬼滅の刃・遊郭編』の主題歌を歌うことが決まったAimerさん、ドラマ主題歌が好調なUruさんなど、注目の女性ソロも選びたい。
それでいて、ビルボードジャパンチャートの上位常連であるYOASOBIは、若年視聴者獲得のために欲しいところ。かといって、演歌枠を減らしてしまっては、国民的番組の意義が薄まってしまう……。確かに、全体のバランスが難しいですね。注目のボーイズグループが多い白組も、混迷を極めそうです!
(構成・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)
【さらにヒートアップした白組編は、10/22(金)の21時に公開致します!】
◎カーシー:自他ともに認めるトップクラスの紅白マニア。第14回以降、映像に残っている回はすべて視聴し、予想歴は20年以上。ミュージックソムリエの資格を持つ。自身のブログでも紅白や音楽について綴っている(https://kerseemusic.com/)。
◎新亜希子:アイドルほかエンタメ全般に詳しく、数々の媒体で執筆する音楽ライター。特に、ボーイズグループへの思い入れと知識量はピカ一。
◎臼井孝:昭和歌謡から最新邦楽、中でもカバー曲や大人音楽の普及を生業とする音楽マーケッター。詳細なデータに基づいたヒットチャートの分析力には定評がある。
◎高安紗やか:NPO法人ミュージックソムリエ協会 、CDショップ大賞事務局、ミュージックソムリエ講座、イベント運営など多岐にわたって活動。