舞台経験60回以上、それでも緊張する

 アタワルパを演じるうえで大切にしたいと考えているのは、“美しさ”だという。

「ただ立っているだけで絵にならないといけない人物だと思いますし、立ち姿や座っている姿の美しさや、歩いているときの存在の大きさを表現しなければならない。なので普段から猫背にならないように気をつけてます」

宮沢氷魚 撮影/山田智絵

 渡辺との初共演で楽しみなことを改めて尋ねると、

「何を投げかけても、ちゃんと応えてくださる方だと思うので、恐れず遠慮なくぶつかっていきたい。そして、ひとつひとつの芝居に自信と責任を持って立ち向かわれる謙さんの姿勢を見させてもらって、自分もそうなれるように努力したいです」

 舞台は今作で4本目だが、毎回、心臓が飛び出そうなくらい緊張するのだそう。

「もう60回くらいは舞台に立っているんだと思うと、そんな自分が怖くなるというか、よくやってたなと思うんです(笑)。でも、役に対してこんなに熱心に考えたり悩んだりするのは舞台ならではだと思いますし、しんどいこともありますけど、いちばん自分が役者だなと感じるんですよね。毎公演怖いですが、気持ちが引き締ります」

 母の影響で子どものころから大好きだった、ドラマで描かれている世界に入ってみたくなり、俳優に憧れるようになったという宮沢さん。

「5歳くらいからずっと見ていたので、初めてのドラマが決まったときは、すごくうれしかったですね」

 俳優の仕事を始めて、2年数か月がたって思うことは─。

大変な世界に入ってしまったなと思います。今まで出会った俳優さん、誰ひとりとして自分のいる立場や地位に甘えている人はいないですし、いつその場から引きずり下ろされるかわからない世界。

 みなさん常に上を見ている。役者は常に新しいものを求めて研究して、勉強して吸収し続けないとダメになると思うので。それって大変なことだなと改めて思います。でも、今は何をやっても楽しいですし、新鮮な出会いや発見がありますし、与えられたものを一生懸命やるだけです」