1日8時間にわたる“ダミー作り”にグッタリ
しかし、こうしたダミー求人は、いったい誰がどのようにして作成しているのだろうか? 外部に依頼しているのか、あるいは、派遣社員などが暇な時間に作成しているのだろうか?
「実は、ダミー求人の作成は、うちの人材紹介会社では“窓際族”の社員がやらされる仕事でした。実際に、私もやっていましたから。
精神的な問題を抱えている人や、トラブルを起こしてしまった人、もしくは、上司とのソリが合わないというだけでも、窓際族にされる社員が多かったのですが、彼らへの指示はたったひと言だけ。上司から“求人数、増やしておいて”と言われるんです。この言葉が、窓際族に任命された合図。
作業内容は主に、他社サイトに掲載されている有力そうな求人を自社のサイトで検索し、ヒットしなければ、その求人を新規で作成する、というものです。検索とコピー&ペーストの繰り返しになるので、“楽そうだな”と思われるかもしれませんが、1日8時間、ずっとその作業をするのは不毛です。さらに、“こんな求職者の方々を裏切るようなことを、なぜ自分は長時間やらされているのだろう……”という気持ちにもなります」
作業自体は単純なものであっても、毎日それだけをやらされ続ければ、精神的にかなり追い詰められるだろう。さらに、その作業には終わりが見えないのだという。
「なぜなら、他社も同じようなことをしているので、求人数は無限に増えていきます(笑)。極論をいうと、日本中にある会社の数だけ、求人を作らなければならないことになりますね」
現在、日本には約400万社もの会社があるというから、その職種や部署ごとに求人を作成していれば、その数はとてつもないものになる。結局、三村さんは「自分が作成したダミー求人を信じて登録してきた求職者の方が、紹介手数料の高い企業にかなり強引に入社させられたのを目の当たりにして、心が折れた」と、退職を決意したという。
最後に、こうしたダミー求人を見分ける方法を聞いてみると、
「求人の内容を見れば一目瞭然です。実際にそのエージェントが撮影した独自の写真が掲載されていたり、その企業の社員インタビューや、詳細な『求める人物像』なんかが書いてあったりするものは、実際に紹介してもらえるものだと判断してもいいでしょう。企業との契約を締結しているエージェントであれば当然、求人が埋まった場合には募集情報を取り下げますので、“ちょうどその求人は埋まってしまいまして”という手法も使えません。
逆に、写真がイメージ画像であったり、『NO PHOTO』と表記されたりしている場合、そして、記載内容が給与・勤務時間・会社の住所といった最低限の情報のみの求人は怪しいですね。ダミー求人といえど、やはり勝手に他社サイトから画像や詳細な条件を拝借してしまうわけにはいきませんから、どうしてもあっさりとした情報しか記載できないのです」
これから転職をする方は、どうか表向きの『満足度』や『求人数』に騙(だま)されずに、信用できるエージェントを自分の目でしっかりと検討してもらいたい。
(取材・文/松本果歩)