渋沢栄一は、すでにお金になっていた!?

さいたま支局では「プルーフ貨幣」と呼ばれる特別な加工を施した硬貨の製造と、3局で唯一、「勲章」の製造過程も見学することができる。

 プルーフ貨幣とは、端的に言えば記念や収集のための、いわば工芸品のような貨幣。

通常貨幣とは違い、研磨機で表面を磨き上げピカピカにしたり、変色しないようにスプレーをかけたり、1枚1枚丁寧に造ります」とは、ガイドの向井良徳さん。

 まるで鏡のような光沢をもつ完成品は「硬貨のデザインってこんなにカッコよかったんだ……」と、思わず見惚れてしまうこと必至だ。

3.目視検査を終えて完成したプルーフ貨幣は、まるで鏡のよう。硬貨のデザインや美しさを再発見できる

 特別に製造されるプルーフ貨幣は、お値段も通常とは異なる特別価格。その年の1円玉~500円玉まで6種類、666円を組み込んだセットの販売価格は10倍以上の約7700円~。「実際に使えますよ」と教えてくれるも、もったいなくて使えません!

 勲章製造では、職人の匠の技を堪能できる。天皇陛下が御即位パレードの際に佩用された「大勲位菊花章頸飾」、春秋叙勲の際に授与される勲章も造幣局でひとつひとつ手づくりしているというからオドロキ。見学者の視線を浴びながらも、ミリ単位の作業を施していく職人の集中力に脱帽だ。

 工場見学を終えて、隣接する博物館を回っていると衝撃の事実が発覚した! '24年に一新される新一万円札の顔である「渋沢栄一」は、すでにお金になっていた!!

埼玉県の記念千円銀貨には渋沢栄一が

「現在、東京2020オリンピック競技大会の千円銀貨幣などを発行しているように、国家的行事の際に発行される記念貨幣を製造しています。地方自治法施行60周年の記念に、各都道府県別の記念貨幣を発行したのですが、実は渋沢栄一は故郷である埼玉県の千円銀貨としてすでに登場しています」(向井さん)

 ほかにも、博物館にはかつては日本最古の貨幣とされていた「和同開珎」や、江戸時代の「慶長大判」なども展示され、お金の歴史が学べる。また体験コーナーでは、千両箱を持ち上げたり、貨幣の健康診断機で手持ちの硬貨の状態を測ったり、親子で盛り上がること間違いなし。

 ためになる“おカネの話”、1度聞いてみてはいかが?

 アナタの貴金属に刻印される!?リングやネックレスなどに「ホールマーク」が刻印されていれば、含有量や純度に偽りなし!品位を証明する「ホールマーク」造幣局では、貨幣材料の分析技術を活かして指輪やネックレスなどの品位証明も行っている。

「貴金属製品の製造や販売をしている事業所からの依頼を受け、その製品に含まれる貴金属の純度を調べる試験を行っています。この試験に合格した者に証明記号を打刻して、その品位を証明しています」(辻本さん)

 つまりは証明記号の「ホールマーク」が刻印されている貴金属製品は、造幣局のお墨つき。でも夫(彼氏)からのプレゼントに刻印がないからといって「ニセモノ!?」なんて疑わないで。あくまで、任意ですから!

リングやネックレスなどに「ホールマーク」が刻印されていれば、含有量や純度に偽りなし!

独立行政法人 造幣局さいたま支局
埼玉県さいたま市大宮区北袋町1-190-22
開館時間/9:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日/第3水曜日/年末年始(12月29日~1月3日)/臨時休館あり 入館料/無料

※新型コロナウイルスの影響により、工場見学および博物館は3月31日(火)まで休館します。4月以降のスケジュールは、造幣局ホームページでお知らせしていきます。

※写真提供/独立行政法人 造幣局

(取材・文/我妻弘崇)

(週刊女性2020年3月24日号掲載)