もしも死にたくなったら30分耐えて​

 それでもどうしようもなくなってしまった場合、あるいは、自分の抱えている気持ちを誰ひとりにも話せないときにはどうすればよいのだろうか。

 実は、自殺衝動がものすごく高まり、行動に移してしまうという“最高潮”のタイミングは、一般的にそこまで長くは続かないのだという。

自殺衝動が続くのは5~10分くらいの範囲だとされていて、私も“自分の衝動が抑えられない”という相談者からの質問に対しては“まず30分、耐えてみましょう。30分耐えて、できればそのまま寝てしまいましょう”とアドバイスすることがあります。

 ひとりで耐えることが難しかったら、たとえ核心めいたことを吐き出せなくても誰かに話しかけ、他愛もない話をしながらその時間をやり過ごす、というのもひとつの対処です。ただ誰かと一緒にいるだけでもいいのです。ちなみに、つらい気持ちから逃れるためにアルコールを摂取すると極端な判断や行動に繋がることが多いので極力、避けてほしいところです

 完璧にはわかってもらえなくてもいいし、苦しい気持ちをすべて吐き出す必要はない。最悪の事態を引き起こすことがないように、一緒にいてもらえるだけでもいいのだ。身近な人に連絡ができない場合は『こころの健康相談統一ダイヤル』などに電話をかけるのもいいだろう。

 藤井氏は今回の訃報の受け止め方について「無理やり忘れようとする必要はない」という。

三浦春馬さんが亡くなったことを本当の意味で受け入れるには、場合によっては年単位の時間がかかります。ですから、無理に忘れようとしないこと。私たちの人生のなかでの“ひとつの出来事”として位置づけるためには、むしろ彼のことを考え続けることも必要です。

 情報の真偽はさまざまなので留意は必要ですが、ニュースに出ている情報から、生前の彼の思いを自分なりに冷静に考えてみるのもいいですし、定期的に彼の出演作品に触れるのでもよいでしょう。周りの誰かと彼の話をしてみるのも、自分の心を穏やかに保ことを助けます。そして、その過程こそが“彼は私たちの心のなかで生き続けている”ということに他ならないでしょう

 友だちでも家族でも、相談ダイヤルなどの知らない人でもいい。三浦さんの死を悼みつつ、誰かに話を聞いてもらうことで、自分のなかに抱え込み重くなりすぎた感情を少しでも軽くしてほしい。

(取材・文/松本 果歩)