12月11日に公開の映画『天外者(てんがらもん)』。7月に亡くなった三浦春馬さんとの共演を、親友の三浦翔平が振り返った。翔平のデビューからの付き合いだった2人の関係は作品の中にも色濃く反映されている――。
クランクイン前には
2人でごはんに
三浦春馬さんが全身全霊をかけ挑んだ最後の主演映画『天外者』が、12月11日に公開される。薩摩藩士から実業家となり、日本の新たな時代を切り開いた男、五代友厚を演じた。その友厚と切磋琢磨しながら、志高く生きた盟友の坂本龍馬を演じたのが、プライベートでも親交の深かった三浦翔平だ。
「撮影中の春馬は、すごい熱量で五代友厚と向き合っていて、五代とともに人生を過ごしているように見えました。特に龍馬が亡くなり、才助から友厚に名を変えて実業家となった後、自分の病を隠しながら大阪商人の前で演説をする姿には、鬼気迫るものがあって、僕は試写で見たんですけど、その迫力に圧倒されました」
ストイックに役作りをするタイプの春馬さんを間近に見てきて、この映画にかける思いはすさまじいものがあったと振り返る。
「クランクインする前にふたりでごはんに行ったんですけど、そのときから五代について熱く語っていたし、劇中の殺陣のシーンに関しても入念に動きを確認して。龍馬と背中合わせで戦うシーンがあるんですけど、そこのシーンは納得がいくまでやり続けてました」
坂本龍馬役は、今までもテレビや映画などでたくさんの役者が演じてきた歴史上でも人気の高い人物だが、今回は若さあふれる野心に燃えた豪快な龍馬を熱演した。演じる前には龍馬の墓参りもしたという。
「クランクイン前に早めに京都に入り、幕末・明治維新期専門の博物館である霊山歴史館や龍馬ゆかりの地をまわりました。お墓には最後に行ったんですけど、どうしても行かなきゃ! っていう思いで向かって、“演じさせていただきます”という報告をしました。資料を読んで頭では理解してたけど、歴史館やゆかりの地を巡ったことで、目で見て触れて深く理解できた部分もあったので、行ってよかったなって思いましたね」
「翔平が龍馬でよかった」って
ふたりが出会ったのは、'08年放送のドラマ『ごくせん』第3シリーズ。
翔平のデビュー作でもあり、初めてのことで不安ばかりの撮影で支えになったのが春馬さんだった。それからはプライベートでも飲みに行ったり、サーフィンに出かけたりする仲に。親友だからこそ作り出すことのできた才助と龍馬の空気感が、スクリーンからも伝わってくる。
「龍馬を題材にしたいろんな作品を見ていたので、その役に引っ張られてしまわないかという不安もあったんですけど、春馬と一緒にやることによって自然と僕の思う龍馬像ができあがっていきました。やっぱり春馬だったから撮れたし、五代が春馬だから、あの龍馬ができたんですよね。春馬からも“翔平が龍馬でよかった”って、撮影後に言われたのがうれしかったな」
中盤、船の甲板でふたりだけで語り合うシーンがある。「もうすぐ日本の夜明けじゃ」と龍馬が声を上げ、才助とふたりで目を輝かせながら朝日を眺めるのだが、翔平自身も思い入れの深いシーンとして挙げる。
「まさにあのシーンは、ふたりだけで何度も読み合わせをしたシーンなんです。本番直前はふたりともまったく話さなくて……。でもそれがすごく心地よくて。春馬も僕も気持ちが入っていて、監督から一発OKをいただきました。
いろんなことがあって打ちのめされた才助の背中を押すために、龍馬が才助をわざと焚きつけることでまた才助のうぬぼれが戻って、日本を変えていこうってお互いの気持ちを確認し合う重要なシーンなんです。あのシーンはセリフも、ふたりの関係性もそうだし、僕の中で一生残るシーンです」
ただひとつ心残りなのが、完成した作品を春馬さんと見られなかったことだと話す。今、どんな気持ちで公開を迎えようとしているのか、悲しみをにじませながらも答えた。