安倍晋三首相が体調不良による辞任を表明したことにより、自民党総裁選が9月8日に告示される。“ポスト安倍”の最有力候補となったのは、菅義偉(すが・よしひで)官房長官だ。党内の主要派閥のほとんどは、菅氏の支持を決めているという。
菅氏は“根回し”や気配りに長けている
菅氏の“天敵”と謳(うた)われているのが、森友・加計問題をめぐり、記者会見で激しいやりとりをしたことで知られる、東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者だ。菅氏からは「主観だ」「質問が長い」と揶揄(やゆ)されながらも、果敢に切り込んでいく。9月2日に行われた菅氏の総裁選出馬会見においても、これまで会見では「質問妨害」があった経緯を説明し「総理になられた際には、会見のあり方を変えるか」という趣旨の質問を投げかけた。
だが、質問の途中で司会者から「簡潔にお願いします」と注意が入り、菅氏からは「早く結論を質問してくれれば、それだけ時間が浮く」などと皮肉ってかわされ、番記者とおぼしき人たちから大きな笑いが起きたのを私は目の前で見た(※フリー記者として参加)。まるで、「私は菅さんが正しいと思います」と媚びを売っているかのような笑いで、なんだか気持ち悪かった。私は望月記者を全面的には肯定はできないが、あの会見での異様な空気は脳裏にこびりついている。実際に何度もあの空気を味わいつつ、菅氏と向き合ってきた望月記者に、菅氏の長所・短所や今後、予想される情勢について語ってもらった。
まず、会見でたびたび菅氏と対峙している望月記者から見て、彼はいったい、どんな人に映っているのだろうか。
「食事をともにするなどの付き合いはなく、会見の場での菅さんしか見ていませんが、麻生派や細田派など強力なメンバーが支持を表明した要因のひとつには、菅氏が日ごろから“根回し”や細やかな気配りをしていたことがあると思います」
望月さんから見ても、菅氏はうまく味方をつけることに長けているという。
「議員の中には女性記者に対してリップサービスをしがちだったり、近くに座らせたりしたがる人もいますが、菅さんは“男女で接し方を変えない”と複数の男性記者たちから評判です。また、側近たちの裏切りによって不祥事が発覚する議員は多いですが、菅さんはこれまで、自身の大きなスキャンダルが出ていないですよね。秘書や周りの人間とどう付き合い、どんなふうに可愛がるかというのは政治家にとって、とても大切です。菅さんはそれが上手で、周りと信頼関係を築き、“菅さんを守ろう”と思ってもらうのが得意なのかな、と感じます」