「リハビリとしてネタをやっている」
高校に入学して「変わらないと」という気持ちが芽生えた白鳥さん。中学の同級生もほとんどいない高校だったため、入学式で勇気を出して“あること”を決行した。
「自分のキャラを変えようと思って。自己紹介のときに笑いをとろうとして“白鳥久美子です。安室奈美恵に似てるって言われてます。テヘ”みたいなことやったら、見事にスベったんですよね。“やべえやつだ”っていう感じでクラスの中で浮いちゃって、露骨な無視が始まったんですよ。遠足に行くバスのなかでクラスメイトがボケていて、おもしろかったので思わず笑ったら“てめえが笑ってんじゃねえよ”って言われて。私は笑うことも許されないのかと思ったら、人格を完全に否定されたように感じて、つらくって。そこから笑うことをやめちゃいましたね」
気持ちを完全に打ち砕かれた高校時代の白鳥さんは、どこに救いを見出したのか。
「演劇部に入っていて、舞台上で別人格を演じてクラスメイトの悪口を言っていたから、それが逃げ場でした。それこそ“死ね”とか“嫌い”とか言うと、お客さんがウケてくれる。自分で脚本も書いて、演劇部の中では“おもしろい”って言ってもらえていたことが救いでしたね。それから、私がクラスでいじめられているのを見た先輩が“白鳥、別にあのクラスに関わらなくていいよ。行事に出るのがしんどいんだったら、演劇部の仕事を手伝わなきゃいけないってことにして逃げておいで”って。“頑張って”じゃなくて“こっちに逃げておいで”と言ってもらえたのは、うれしかったです」
演じる経験が、お笑い芸人になることにもつながったという。
「ずっと自分のフラストレーションを発散する場所が欲しくて、舞台に立ったときだけは、みんなが違う目で見てくれたのが心地よかったんです。私がなりたい人間になれるし、役に隠れて本音が言えるっていう気持ちよさもあるし。最初は演劇を続けていたんですけれど、うまくいかなくて今度は芸人になろう、みたいな。どうにか本音を言える場所をずっと探してたような気はしますね」
長年いじめられていた白鳥さんだが、『たんぽぽ』の相方・川村エミコさんも、ずっといじめられてきた。川村さんは芸人になってからも、他の女芸人からいじめや嫌がらせを受けていた時期があるそうだ。だが、川村さんは“いじめる人とは無駄に交わらない”というスタンス。白鳥さんは、彼女のそういう姿勢がかっこいいと思って徐々に仲よくなり、コンビを結成したという。
「川村さんとはよく“私たち、リハビリとしてネタをやってるよね”と言い合っています。お互いに呼ばれていたあだ名とかをコントで出すと、それがウケたりして“あんなあだ名をつけてもらってよかったね”と。あと、いじめられた側って、されたことをずっと鮮明に覚えていますから。いじめっ子に当時“やめて”とか“ひどい”って言えなかったぶん、消化されないままでいた思いをネタにまで書くんだろうな」