たかまつなな(写真左)と白鳥久美子さん(同右)対談の様子

自分を責めてしまうマインドが怖い

 いじめの経験について、ネタの中ではなく、テレビ番組で初めて話したのは27歳くらいのとき。ニキビで悩んでおり、大学時代はそれが原因でいじめられていた話をしたら大ウケ。同じようにニキビで苦しんでいる視聴者からは、手紙も届いたという。

「手紙には返事を書いて、ニキビの治し方や“いじめてくるやつを気にせず、未来が明るくなる方法を探しましょう”みたいなことを伝えましたね。私の場合は、大学への進学で東京に出てきたころからニキビが増え始めて。お弁当屋さんでバイトをしていたんだけれど、お客さんに“あんたが作ったんならいらない”って言われたり、電車に乗っていても“見て見てあの人すごいニキビ”って言われてるのが聞こえちゃったり。

 当時、いじめに加えて、演劇の先生に容姿や演技のことを厳しく言われもして、お金もないし“もうダメだ”ってひたすら落ちて。“本当にしんどくなったら、ここから飛び降りよう”と思っていたビルに行ったんです。でも屋上に立ったら、あまりの低さにびっくりしたのよ。“私、ここから飛んでも死にきれないな”って。10階以上あると思い込んでいたそのビルは、実際は3階建てだったんです。確実に死ぬつもりの人はもっと高いところに行くんじゃないかと思ったら、(無意識にこのビルを選んだ)私は、実はめちゃくちゃ生きたい人なんだと感じたの。そのときに、けっこう認識が変わったんです」

 生きる気力を取り戻し、皮膚科の病院を探すと、20万円ほどあればニキビを治せることがわかった。

それからはバイトを頑張って、貯めたお金を握りしめて病院に行って治しました。すると、気持ちもすごく軽くなって。“なんだ、こんなことで人生変わるなら、早く治せばよかったな”と思いました。容姿で悩んでいる子って多いですよね。自分の人生がちょっとでも前向きになるなら、お金を貯めて整形しても全然いいと思います。

 例えばニキビで苦しんでいると、肌のことだけでこんなに人から蔑(さげす)まれるなんて、と傷ついたり、ずっと治らなかったらどうしようとか、そもそも私は人間性がダメだからこういうものができるんじゃないか、と自分を責めてしまうんですね。でも、治ってからは“ニキビは病気みたいなものだし、いじめてくる人たちがおかしい”というマインドに変わったかな。この手のいじめなんて、本来はこちらにほとんど非がないはずなのに“自分が悪い”と思ってしまうのが怖いですね、いま思ったら」

 美容整形は費用もかかるし、失敗のリスクもあるため、一概には推奨できないかもしれない。しかし、選択肢のひとつとして尊重されるべきものではあるはず。両親や友人など、身近な人にもっと気軽に相談できるといいのかもしれない。

 白鳥さんは自殺を踏みとどまったが、大学時代に知り合い、自ら命を断ってしまった友人もいる。その女性はギリギリまで普通にしていて、白鳥さんが“あの日に死ぬって決めていたんだ”と気づいたのは、後になってからだったという。

「彼女、真面目だったんだと思うんですよね。私って、妄想とか楽器とか演劇とか、あとは人のいない田んぼを自転車で爆走するとか、ほかにも逃げ道を10個くらい用意していて生きてきたけれど、真面目な子っていじめられていることに対して真正面から向き合うじゃない。すると、だんだん行き詰まって“死ぬしかない”ってところに行きついてしまうと思うんです。“もっと人に対して適当に向かい合っていい。いじめている子に確固たる理由なんてないし、きっと自分が生きやすい場所はほかにいっぱいあるから、関わらずにそこに逃げて”って、その子にいま会えたら言いたいな

 ところで、バラエティ番組では、近年は減ってきたものの“ブスいじり”が登場することがある。実際にブスいじりをされてきた白鳥さんだが、そのシーンを目にした子どもたちがマネをするなどして、いじめにつながる恐れはないだろうか。

「私自身はブスいじり、嫌いでもないのよ。いじめと違って、芸人さんは“これをいじったら白鳥の笑いにつながる”っていうのをわかってやってくれる。それは嬉しいんだけれど、問題はそれを見た子どもたちへの影響ですよね。“私もあんなことをされたらどうしよう”とか“あれで笑いがとれるってわかったら、また男子が何か言ってくるかもしれない”っていう恐怖を与えてしまっている可能性があるかと思うと、難しいなと。結論は出ていないけれど、私はとにかく“言われたらちゃんと怒ろう”と思っていますブスいじりをされたら“ふざけんな”“やめろー”って。“私は自分自身をそんなにブスだと思っていません”という態度はしっかりとっていこうと考えています