いじめられたら「生きやすいところへ逃げよう!!」とメッセージを発信する白鳥久美子さん

 逆に、自分が後輩をいじる際には、どのようなことに気をつけているのか。

「相手が傷つかないよう、“私はあなたを好きなんだよ”って気持ちが伝わるように、いじるかな。後輩だったら、何回もご飯行くようになったりして仲よくなったときにやる。初対面だとか、関係性がないうちからやったら笑いにならないから。“これはいつもの遊びだよね”って、お互い了承できる関係になってからでないと、いじりはしません。子どもたちのリアルな現場の場合には、いじられていたほうが“心の底から笑って受け入れているか”に気をつける必要があると思う。“ああ言っちゃったけど、大丈夫だった? ホントは傷ついた?”みたいなフォローをすることが大事ですよね

「逃げていいから、頑張るな」

 いじめられていた学生時代に白鳥さんが救われたのが、いつも観ていた大好きなテレビ番組“めちゃイケ”こと『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)。芸人になってからはレギュラー出演枠を獲得し、7年ほど出演。「今までのいじめられたぶんはここで解消できた」と思えるほど幸せだったというが、“ザ・体育会系”の現場は想像以上に大変だった。

「理不尽なことはありました。共演者の方々には救われた部分が多かったけれど、スタッフさんかな、しんどかったのは。新メンバーで緊張しているときに呼び出されて“お前ら笑うのも仕事なんだよ、もっと笑えよ”って言われて。それで次の収録はめっちゃ笑うようにしたら今度は“てめえ、ヘラヘラ笑ってんじゃねえよ”って怒られました。いま思えば、盛り上げてみんなで笑うところと、笑うんじゃなくて発言してほしいところがあったんだろうなって思うけれど、当時はわからないから“なんて意地悪なんだ”と感じました。メンタルがやられていた時期はありましたね

 しかし、最後には和解が訪れた。

「私、嫌なことを言われ慣れすぎたっていうか、大抵のことは大丈夫になっちゃって。でも、これからは“言いたいことを伝える人生にする”って決めたんです。だから最後にスタッフさんに胸の内を伝えたら“そんなふうに思ってたんだ”とか“言ってくれて嬉しいよ”と返してくれて、互いの思いを吐露(とろ)し合ううちに和解できました。当時はひどいなと感じた発言も、私に頑張ってほしかったからこそ言っていたみたい。いじめられていたときは自分の気持ちを言えないまま閉じていたけれど、大人になって、こんなふうに思いを明かせるようになった。結果的に周囲との関係もよくなっていったから、“私、変われたんだな”と思いましたね

 白鳥さんを長年、苦しめてきた「いじめ」。どうやったらなくなるのだろうか。

「“社会が変わればいい”だとか“そういうことをしない人間を作ろう”という意見があるじゃないですか。叶(かな)ったら本当に素敵な世の中だとは思うんだけれど、実現までにどれだけ時間がかかるんだよって思うし、経験者として“いじめはなくならないんじゃないかな”と思っていて。もちろん、理想に近づく努力をし続ける社会ではあってほしいですが、それよりは、もしいじめられる側になったときの“逃げ道”を確保しておくほうがいいんじゃないかなって。

 実際、逃げていいと思う。真面目に戦いすぎている子が多い気がするから。自分自身が居やすい場所を見つけて生きることが、いちばん大事なことだと思ってます。学校も会社も、嫌だったら行かなくていい。自分が生きやすい環境を見つけたときに“ここでやっていくには何が必要だろう”って考えて仕事を探したり、お金を稼げる方法を探せばいいと思うから。とにかく“嫌ならちゃんと逃げていいから、頑張るな”。いじめに悩んでいる子には、それだけは言いたいです

(取材・文/お笑いジャーナリスト・たかまつなな)


【PROFILE】
白鳥 久美子(しらとり・くみこ) ◎1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。'08年に川村エミコとお笑いコンビ『たんぽぽ』を結成。フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』のレギュラーを約7年間にわたり務めたほか、テレビ、ラジオ、舞台など多方面で活躍中。趣味は散歩やシルバニアファミリー、特技は詩を書くこと。

※Youtube『たかまつななチャンネル』では、白鳥久美子さんへのロングインタビュー全編を公開中です。(https://youtu.be/fPSuKAYsXq8

【INFORMATION】
いじめへの対処法は、人それぞれです。上記タレントさんと同じ向き合い方が正しいとは限りません。まずは自分の状況を誰かに相談してみることが大事。難しければ、下記のような窓口へ連絡してみましょう。

◎よりそいチャット(LINE・チャット)……生きるのがつらい人の相談窓口。
https://yorisoi-chat.jp/

◎チャイルドライン(電話・チャット)……18歳までの子ども専用の悩み相談窓口。
https://childline.or.jp/index.html 電話:0120-99-7777

◎24時間子供SOSダイヤル(電話)……子どもや、いじめなど子どもに関する悩みを持つ保護者等が相談できる窓口。24時間365日相談できる。 電話:0120-0-78310

◎BONDプロジェクト(LINE・電話・メール)……生きづらさを抱える10〜20代の女子のための相談窓口。
https://bondproject.jp/ 電話:070-6648-8318

◎自殺総合対策推進センター……都道府県・政令指定都市別の、いのち支える相談窓口一覧を掲載。
https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

※その他 厚生労働省のHPも参考にしてみてください。