「議員の肩書を利用してウソを伝播した」
この住民投票の是非については、有識者の批判的な見解がメディアで取り上げられるなど物議をかもした。唯一の女性町議を権力を持った男性が寄ってたかって……という構図に不快感を覚えた人も少なくない。新井氏の告発が真実ならば、性被害者の口封じとも取れるからだ。
黒岩町長に「やりすぎではないか」と質問をぶつけると、こう返ってきた。
「やりすぎとは考えていません。コロナの影響もあって、私が新井氏を訴えた刑事事件と民事裁判は遅々として進まず、そうこうしている間に新井氏は“性被害者の町議”として町外でも活動を続けてきました。議員の肩書を利用してウソをどんどん伝播していくのは許せない。外国メディアは“性的暴行を加えた町長が、被害を訴えた女性町議のクビを権力で切った”などと間違った捉え方をして、ウソのニュースが世界中に広まっている。
何度も言いますが、私が新井氏と男女の関係を持つことはあり得ません。全部つくり話なのに、新井氏は“性被害を告白した勇気ある女性”と褒められてすらいる。住民投票は、新井氏の言う性被害について私がシロかクロかを決めるものではなく、言いっぱなしで証拠を出さず、議会で説明責任を果たそうとしない新井氏の議員としての資質を問うものだったのです」
「事件当日は前副町長が同席していた」
騒動から1年。町長か新井氏のどちらかがウソをついているのは間違いない。性被害があったかどうかをめぐる争点がいくつか考えられる中、無視できないポイントが2つ浮上している。
ひとつは週刊女性既報(2020年8月18・25日号)の「事件があったとされる日の同席者」について。潔白を証明するため証拠探しに熱心な町長は、今夏、取材に「当日は同席者がいたことがわかり、部屋に2人きりではなかった」と訴えていた。
黒岩町長はあらためて、
「じつは同席者は前副町長なんです。騒動になってから前副町長が在職当時の手帳を見返したところ、事件があったとされる日に自分宛てに新井氏のアポイントメントが入っていたことがわかり連絡をくれました。几帳面な性格でびっしりメモを残しており、後から書き加えるような偽装工作はできない。警察に報告するまではどのような妨害を受けるかわからないため個人を特定する情報は伏せましたが、もう報告は済みましたので明らかにします」
第三者の証言は重い。町長はそれまで、事件当日に新井氏と面会したことだけは認めながら、「年始挨拶で訪問客が多い日」「女性と会うときはドアを開けっ放しにする習慣がある」「窓からは交番が見える」などと犯行に不自然な状況下だったことを主張するにとどまっていた。これらは“状況証拠”にはなり得るかもしれないが、決定打に欠ける。
新井氏に副町長の同席について尋ねると、
「たしかに副町長を訪ねて行ったことはありますが、全く別の日です。これは確信があります。裁判があるので詳細は話せませんが」
と自信たっぷり。手の内は明かしたくないという。