物語の考察・解説がネットに乱立
だが、14年の歳月を経て『エヴァ』は、全編完全新作の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ(全4部作)として再生された(第1作『序』=2007年9月1日公開、第2作『破』=2009年6月27日公開、第3作『Q』=2012年11月17日公開)
かつてのテレビアニメの劇場版といえば、『ガンダム』に代表されるようなテレビ版の再編集に、場面のつながりをスムーズにするための数少ない新作カットを追加した、映画なのにテレビサイズのままという低予算感が漂う劇場版がお決まりだった。
(庵野監督もファンを公言する『ガンダム』が、リアルロボットアニメという、まったく新しいジャンルを確立させた傑作であることに、もちろん異論はない)
放送当時、アナログのテレビサイズのセル画アニメだった作品を、新劇場版では全編劇場用サイズで作り直したのだ。時代とともに進化を遂げたデジタル技術を駆使し、3DCGをふんだんに取り入れた映画ならではの緻密な描写にあふれた作品へと生まれ変わらせた。
その物語も、ただの再編集版ではなかった。特に第3作、新劇場版『Q』でシンジが目覚めた世界は、前作の新劇場版『破』から14年後、かつてのネルフの仲間たちは反ネルフ組織・ヴィレとなり、初号機をエネルギー源とするヴィレの戦艦ヴンダーに乗り、葛城ミサトが艦長という、まったく新しい物語に突入していく。
「14年後」という数字は、旧劇場版から新劇場版『Q』までの期間だといわれ、新劇場版がテレビ版、旧劇場版、すべての物語をつなぐ設定になっていると、ファンの間では確実視されている。
そして2021年3月8日、いよいよ14年をかけた新劇場版が完結する。『シン・エヴァ』の予告編が公開されるや否や、物語の考察・解説がネットに乱立している。
「Qとその続きは劇中劇」「初号機VS13号機には、それぞれ誰が乗っているのか」「ロンギヌスの槍VSカシウスの槍とは」「シンジVSゲンドウ、親子の対決」「シンジの目が紫になった意味は」……と、ファンは今もあの日と変わらず『エヴァ』に夢中のようだ。
私たちが補完できなかった物語の真の結末が描かれるのか。あの日のエヴァ体験は補完できるのか。確認しなければならないシーンがめじろ押しの『シン・エヴァ』だが、映画を見終わったら今度こそ、心から「ありがとう」そして「おめでとう」と拍手がしたい。
“幸や不幸はもういい”(←業田良家著『自虐の詩』より)、まずは、最後の『エヴァンゲリオン』を見届け、上映時間2時間35分を大いに楽しもうではないか。
(文/春原恵)
(2021年3月 週刊女性PRIME掲載)