ハンバーグは那覇市、カレールーは鳥取市

 前述の過去3年平均データで《やきとり》をみると、最新分、前回分とも青森市(青森県)がトップで、差額でも2位[最新では千葉市(千葉県)、前回は福井市(福井県)]を引き離している。《しゅうまい》も同じ構図で横浜市(神奈川県)川崎市(同)を抑えて強い。

《ハンバーグ》那覇市(沖縄県)が連続トップを守っているが、2位[最新では甲府市(山梨県)、前回は水戸市(茨城県)]に大差はつけておらず、餃子のケースのように年間500円差以内にとどまっている。

 那覇市の広報担当者の話。

市内でハンバーグの購入額が多いことが話題にのぼったことはないと思う。某フライドチキンの消費が多いと取り上げられたことはあるが、那覇市のウリとしてはハンバーグよりもステーキのほうが有名ですね

 家計調査における調理食品は、スーパーの総菜などが対象となる半面、外食は対象外のため、市内のいわゆる名物グルメとはリンクしにくいのかもしれない。餃子のように、持ち帰りできる専門店が林立する環境がないとバトルは盛り上がらないのか。

 調理食品を離れて、《カレールー》の購入額に着目した。最新3年、前回3年とも鳥取市(鳥取県)がトップで、いずれも新潟市(新潟県)が100円以内の僅差で追っている。餃子バトルとは異なるが、ルーの購入は家庭でカレーをつくることにつながるから“カレー好き”が多いといえるかもしれない。

 鳥取市の広報担当者は「カレールーの購入額が多いことは知っており、毎回、気にはしています」と話す一方、

「しかし、カレーで町おこしするようなイベントはない。新潟市をライバル視するようなこともありません」

 新潟市の広報担当者も、

「観光・産業振興分野ともカレーを推すような施策はやっていません。個人的には、住んでいて“カレーの町”という印象はありませんね」

 とバトルに発展しなさそうだった。

“ポスト・餃子バトル”はあるのか?

 餃子バトルの当事者である浜松市に聞いた。同市は餃子だけでなく、《うなぎのかば焼き》でも王座を奪い返したばかり。さらに《アイスクリーム・シャーベット》でも上位に食い込んだことがある。

「餃子対決が話題になりますが、行政主体ではなく、民間団体がPRしたりイベントを開くなど頑張っているんです。市はそうしたイベントなどを共催や後援することはあっても、そこまで順位にこだわっているわけではありません。もちろん、1位を取れればうれしいんですが」

 と観光・シティープロモーション課の担当者。“ポスト・餃子バトル”について聞くとこう返ってきた。

「名産のうなぎのかば焼きはずっと1位だったのが昨年落ち、また返り咲きました。ブランディングの一種として注視しています。アイスのほうは、数年前にメディアから“1位ですよ”と指摘されて知りましたが、浮き沈みがあるんです。餃子では、コロナ禍前は宇都宮市や宮崎市の店も招き、市内でイベントをすることもありました。順位よりも、地域の食文化として、ほかの都市と一緒に盛り上げていければいいなと思っています」

 ライバルが強くなければ盛り上がらないのは必定。餃子に続くバトルの種はどこにあるのだろうか。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する