以前のアフレコ時、彼女が戸惑いを感じたことも
現在公開中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、ファンからも絶賛の声があがっている。だが、宮村の中では複雑な思いが……。
「“すごく感動しました。愛があふれていて、監督がどのキャラも救おうとしていて”という声を聞きました。私も絶対そうだと思うんですけど、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』のときはまったく違ってて──」
『劇場版』とは '07年に『新劇場版』シリーズが公開される前、'97年に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』として公開された映画作品をここでは指す。
テレビシリーズの最終回をリメイクしたものだったが、ファンの間ではその結末にはさまざまな声が上がった。
「庵野監督の“こうやりたい”“これを自分はどうすればいいんだ”という葛藤にキャストも飲み込まれて(笑)。夜中の12時を超えるまで、ひとつのセリフにずっと悩まれていたりして。
でもアフレコしないと映画はできないので、私たちキャストも“明日、別の仕事があるのに”と思いつつも、現場を信じて待ちました」
宮村もそんな苦労を重ねた体験から、新劇場版の1作目『:序』もすぐには見られなかったという。
「私は『:序』には出ていなのですが、“このままアスカは出てこない話なのかな? それでもいいか”という気持ちで。そのあと、2作目の『:破』には惣流から式波に名前が変わって出ます、と聞きまして……」
前回の現場でのことが、頭によぎった彼女、
「アフレコの1か月前からストレスで、行きたくないってめっちゃくちゃ思っていたんですよ。でもいざ現場に入ったら、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』のときと監督がまるっきり変わっていて。どうしちゃったの、この仕事しやすい環境は? ってなりました(笑)」
そんな思い出もありつつ、25年たって迎えた終劇。この間には、宮村自身の環境も変わった。
「そうですね……。最初に惣流ちゃんを演じたころは独身だったけれど、私もこの間で母親になりました。『:Q』で式波ちゃんを演じたとき、最後に言葉を発せなくなったシンジを“しょうがないな”って耳を引っ張るところとか、完全に母性が芽生えていましたね。
惣流ちゃんが14歳のときにシンジに対して持っていた初恋の感じとは、まったく変わっていました。そこには自分自身の変化もあったと思います」
最後に、もし『エヴァ』の続編が作られるのなら、どんな役で出てみたい? の質問に、
「今回、あるキャラクターの子どもが出てくるじゃないですか。彼が成長して、自分のルーツを探っていく展開って萌えません? そのときに通りすがりで謎の言葉を彼にかけていく掃除の人とかやりたいですね(笑)。すべてを知っていそうだけど、一体誰なんだ!? って、面白いじゃないですか」
みやむら・ゆうこ
1972年12月4日生まれ。『新世紀エヴァンゲリオン』惣流・アスカ・ラングレーや『名探偵コナン』遠山和葉など、声優としての活動のほかにも、女優歌手としても活躍
(取材・文/蒔田稔)
(週刊女性2021年4月27日号掲載)