テクノロジーの力で安全運転をサポート

 身体機能の衰えを止めることはできないが、日々進化するテクノロジーの力を借りて、安全に運転できるようカバーする方法がある。自動車の最新動向に詳しい、フリーライターの平塚直樹さんが教えてくれた。

「いわゆる“自動ブレーキ”や“誤発進抑制装置”など、安全運転を支援する先進機能を搭載した車が近年続々と登場しています。こうした先進運転支援システムが付いた車を利用することも有効です」

 平塚さんによれば、最近の車に搭載されている主な安全装備は、以下のとおり。

(1)衝突被害軽減ブレーキ…衝突の可能性があるときに警告を出し、危険性が高まると自動的にブレーキが作動する。

(2)誤発進抑制装置…停車や低速走行時、アクセルとブレーキの踏み間違えなどで急発進することを抑えてくれる。

(3)自動駐車…車が自動でハンドルやアクセル、ブレーキ操作を行い駐車の支援をする。

(4)車間距離制御装置…高速道路走行時に、先行車との適切な車間距離を保ちつつ追従走行してくれる。通称ACC。

(5)車線逸脱警報…走行中に車両が車線からはみ出さないように警告してくれる。

「衝突被害軽減ブレーキは今年の11月から新型車に義務化されます。誤発進抑制装置も含め、最近は軽自動車にも装備されていますし、各メーカーで古い車種に後付けできる装置の提供も始めています。先述のさまざまな安全装備をセット化する車も増えていますね。

 ほかにも、体調不良や事故時にボタンを押せばコールセンターと連絡がとれる“SOSコール”、高速道路の運転中、安全な範囲内で自動でハンドル操作をする“ハンズフリー機能”などもあります

 高齢ドライバーにオススメの安全装備が付いた車は?

「普通車ではトヨタのヤリス、軽自動車ではホンダのN-BOXがよく売れていて、どちらも安全機能が充実しています。こうした装備は、新しい車になればなるほど高機能になる傾向があります」

ヤリスは衝突の危険を警報ブザーとディスプレーで知らせてくれる

 65歳以上は購入時に「サポカー補助金」が受けられるので、各メーカーのホームページ等で条件を確認してみよう。

 そんな頼れる先進の安全装備でも「万全ではない」と、平塚さんは釘を刺す。

「あくまで運転をサポートする機能であって、すべての操作を機械が代行する“完全自動運転車”ではないからです。安全装備が付いた車に乗っているからといって、運転の注意を怠るのは問題です」

「最近は100万円台で買える先進機能搭載車もあります」と平塚さん

 先進技術に加えて、「ベーシックな機能の充実にも目を向けるべき」と強調する。

「ハンドルには“テレスコピック”と“チルト”という2つの機能があります。テレスコピックはハンドル位置を前後に、チルトは上下に調節するものですが、メーカーによっては1つだけしか搭載されていないことも。ですが、両方の機能を備えていることが正しいドライビングポジションを取るうえで大切。ハンドル操作や、とっさのブレーキ操作で影響が大きいのです」

 高齢ドライバーの事故防止に向けて来年6月から、違反歴のある75歳以上は免許更新時に、実車による技能検査が義務化される。また、安全装備の装着車のみ運転できる限定免許の創設も検討中だ。

「技能検査が事故防止につながるかというと、内容次第。運転操作だけを見るのか視力や認知能力まで含めて判断するのかで大きく違う。検査だけでなく、シミュレータでもいいので“強くブレーキをかけたらどうなるか?”という体験会もあるといい。自分で経験していないと、とっさのときに対応できませんから」

(取材・文/千羽ひとみ)

(週刊女性2021年5月25日号掲載)