【2】高級住宅地に出現した“うなぎの寝床”
宇都さんによると、不思議な間取りやおもしろ間取りが生まれる理由には、大きく分けて3つのケースがあるという。
1つは、昔ながらの古民家を無理やり現代仕様にリフォームするケース。強引な建て増しなどにより、なんとも不自然な間取りになってしまうというものだ。
2つめは、バブル期以降に流行したデザイナーズ建築によくみられるケース。やたらと「開放感」にこだわった物件が困った間取りとなりやすい。浴室やトイレがガラス張りで丸見えだったり、両親の部屋と子ども部屋にあえて仕切りを設けなかったりと、思春期を迎える子どもたちにとっては迷惑極まりない間取りでもある。
3つめは、狭すぎる土地を力ずくで有効活用したケース。23区内の超狭小住宅などにみられる間取りだ。次に紹介する東京・世田谷区にあるうなぎの寝床のような長細~い一戸建ては、このタイプ。
「間取ラーのあいだでも、かなり話題になった物件です(笑)。奥行きは20メートルほどありますが、横幅はおそらく2メートルあるかないかの長さ。大人が横になるのもギリギリで、人がすれ違うのも厳しい幅です」
ただでさえ狭いのに、なぜか1階にトイレが2つある。
「玄関も2か所あります。あまりにも狭くて廊下を造るスペースがなく、行き来がしにくいようです。しかも、1階が浴室で仕切られてしまっているので、トイレも2つ造るしかなかったのでしょう」
こんな思いまでしてこの土地に家を建てる必要があるのかと疑問だが、ここは東京の成城学園前駅から徒歩圏内で、都内でも有数の高級住宅地。この物件も地方都市では豪邸が建つほどのいいお値段で販売されていたが、見事売買が成立。