児玉清さんの人情味ある進行を振り返る

 ここで、私が出場したときの児玉さんの名司会ぶりを、録画していたビデオから、ほぼそのまま再現します。

 私がアタックチャンスと、その次の1問に正解した部分です。

「アタックチャンスからまた新しい局面が生まれます、果敢にアタックしてください。それでは、参りましょう。アタックチャンス!」

『1874年の10月30日、カール・プッセの『山のあなた』など数々の……』

 ボーン!(解答ボタンを押した音)

「青!(私の解答者席の色)」

「上田敏(びん)!」

「その通り! 数々の詩の名訳で知られる我が国の文学者が生まれています。誰でしょう? 上田敏! 白の方も押されたんですが、青の方が早かった。青の方、何番?」

「25番」

「25番を埋める! そして、アタックチャンスの狙い目は?」

「1番!」

「あー、そりゃそうですなぁ。どうでしょうか、この1番に青の方が入ってくると……。んー、パーフェクトはないようでございますが、ガガッというように青になってしまうわけですね。さあ、ここが空いたことによって、ほかの方にもチャンスが生まれるのか? 今のところは青が有利ですけれども、ひっくり返せるチャンスがあると思います。よろしいですか、アタックチャンス後の問題が大事です……。この問題です!」

『ジロウ、ハチヤ……』

 ボーン!

「青!」

「……柿」

「その通り! 早い! うーん、グングンきます。グングンきます。さあ、青の方、何番?」

「1番!」

「1番に飛び込むー! 2、3、4、7! うわわ、バラバラっと色が変わって、真ん中の8番だけがパーフェクトを阻止しておりますが、わたくしは問題のフォローができませんでした。ジロウ、ハチヤ、フユウといえば、どんな果物の名前(品種)でしょうという問題でございました。もう、ジロウとでた瞬間に柿と……。えー、素晴らしい、果敢なアタックぶりでございました。よろしいですか、これで勝負は決まったようでございますが、1枚でも多くのパネルを皆さん取ってください。参りましょう、この問題です」

 いかがでしょう。普通、クイズ番組では、解答のあとに正解音が鳴るのですが、アタック25では、それがなくて、児玉さんの「その通り!」とか「お見事!」などが正解音代わりだったことにお気づきになりましたか。

 それにしても、短い時間で的確に戦況を視聴者に伝え、問題文の先までフォローする司会ぶり。本当に名人芸でした。

 ちなみに、誤答のときのブー音を鳴らすのも児玉さんの役で、きわどい解答のときの正誤判定も、児玉さんの裁量に任されていたようです

 私の回の収録でも、「何県でしょう?」と問う問題に対して「筑波学園都市」と答えた方がいて、児玉さんは「うん、いいでしょう。筑波研究学園都市ということで、筑波学園が出れば結構でございます」と言って正解にしていました。

 なんだか、人情というか、人柄までも感じさせてくれる司会ぶりだったのです。