3年間、児童が一生懸命に育てたひまわり
町内の小・中学生約1200人は「学校連携観戦」予定だったが中止に。
町議会議員で、同駅前で飲食スペースを併設する鮮魚店を営む吉野繁徳さん(73)は残念そうにこう話す。
「地元の大原洋人(ひろと)選手が五輪出場を決め、本当は会場で旗を振って応援したいところ。子どもたちだけでも見せてあげたかった。町議は関係者として観戦する予定だったが、子どもたちが見られないのに、自分たちだけ見るわけにはいかないと辞退しました」
五輪閉幕後、せめて子どもたちに解体前の会場だけでも見せてあげられないかとも考えたが、それも難しそうだという。
五輪は釣ヶ崎海岸を含む九十九里や外房を世界にPRする絶好の機会になる。観光客誘致のため五輪会場決定前から周辺の16市町村で取り組んできた「ビーチクリーン・キャンペーン」を継続し、五輪向けに会場や周辺、駅前までを彩るひまわりを16市町村の幼稚園、保育所、小・中学校、高校、特別支援学校などで育ててきた。コロナによって栽培期間は1年延び、観戦客が来ないため飾る場所は減った。せっかく育てたひまわりをどうするのか。
同町オリンピック推進課の大多和豪さんは言う。
「各学校によりすぐりのひまわりを選んでいただき、プランターに植えて選手や関係者が通るルートに置きます。プランターには各学校の子どもたちからひとことメッセージを添えてもらっています」
ひまわりはどのように育てられてきたのか。
会場に近い一宮町立東浪見小学校を訪ねると、よりすぐりのひまわりは町側に預けたあとで、開花前の若い株だけが残っていた。
「きれいに花の咲いたひまわりを選んで町に引き渡しました。会場周辺のいずれかに飾られると思いますが、3年間、児童が受け継いで一生懸命に育てたひまわりを世界中の選手のみなさんに見ていただき、応援の気持ちが伝わればうれしいです」(同小校長)
同小の外周には児童の描いたサーフィンのイラストつきの応援ボードなどが複数掲示されていた。
「Welcome to Ichinomiya(ようこそ一宮へ)」とたどたどしい字体でつづるメッセージも、選手や関係者、海外からの観戦客が目にする機会はなくなった。
町民だけではない。上総一ノ宮駅周辺などで観光・道案内をする予定だったボランティア70人はキャンセルされた。
「自ら手をあげてくれた人たちなので、ユニホームをわたすときは『もっと観光情報がほしい』とおっしゃるなど、おもてなしに積極的でした。本番を楽しみにされているようだったので残念です」(前出の大多和さん)