同じ海で波に乗れるだけでも興奮します

 会場近くのサーフィンスポットへ。

 地元サーファーの野田正二郎さん(50)は、

「もともと観戦チケットを持っていなかったし、テレビ観戦します。日本選手のみならず海外からトップサーファーが来るのは楽しみ。技を盗む? いやいや盗めるレベルじゃありません」

 と笑う。

 地元ボディーボーダーの坂田めぐみさん(30)は「チケットが当たっていたので観戦できず残念。見たかったです」と悔しそうだった。

 会場の釣ヶ崎海岸は、サーファーのあいだでは「志田下(しだした)」と呼ばれるスポットで、別名を“サーフィン道場”という。地元サーファーらによると、プロを目指す人しか海に入れないような選ばれし場所らしい。

 近くのスポットに通うサーファーの高橋浩二さん(50)は「海でコロナ感染のクラスターが起きるとは考えにくいし、準備をしてきた関係者がかわいそう」と話す。

 チケットが当選していたサーフィン仲間(49)は言う。

「ふだんからこのあたりは国内トップクラスの選手がいるけど、世界のトップ選手がくるわけだし、海はつながっているんだから同じ海で波に乗れることだけでも興奮します」

 一方、無観客はやむを得ないと考える人もいる。

 農業男性(62)は、

「飲食店の閉店も早いし、みなさんよく守っている。逆にこの状況でよく開催すると思うほどなので無事に終わってくれればそれでいい」

 選手の気持ちを心配する人も。飲食業の依田麗奈さん(26)が言う。

「彼氏がサーファーで洋人くん(大原選手)の友だちなんです。試合で技が決まったときに拍手や指笛が鳴ったり、歓声が聞こえると選手はモチベーションがあがるみたいです。規制が厳しくなって近づけなくなるから静かな海になるかもしれませんが、テレビ中継を楽しみにします。思うように外出できない世の中で、出場選手がワッと思わせてくれる技でスカッとさせてくれるはずです」

一宮町役場には地元・大原洋人選手の出場権獲得を祝う垂れ幕が

 海外の有名ポイントに比べて波が小さいのではないか、と指摘する声もある。会場近くの海水浴場で管理人をする80代男性は言う。

「雪崩のように大きな波が立つこともあり、九州から来たサーファーが“九十九里ってこんなにすごい波なんですか”と驚いていた。にぎやかなのもいいかもしれないが、無観客で静かに波に乗れるのは集中できていいかもしれない」