すぐ近くの家々で多くの町民が願っている
前出の吉野さんは、海外の選手・関係者や観戦客をもてなすため自動翻訳機を購入したが無駄になってしまった。「そんなのはたいしたことじゃない」と吉野さんが続ける。
「五輪会場に決まって県外から移住する人も増えたし、サーフィンをしにくる若い人も増えた。これからは五輪選手と同じ波に乗れるようになる。コロナというまさかの敵にぶつかって無観客開催になりますが、大原選手もほかのどの選手も応援します。会場には行けませんが、すぐ近くの家々で、選手が力を出し切れるように多くの町民が願っています。それはぜひ選手に知ってもらいたい」
感染防止のため静かな海になるのは間違いない。この夏、最高に盛り上がるはずだった海が、逆にいちばん静かだったとしても、応援していないわけではない。世界トップクラスのサーファーにどこまで気持ちが伝わるだろうか。
【東京オリンピック・サーフィン競技】
競技は7月25日から8月1日までの8日間で行われる。対戦方式で、制限時間内に高度なテクニックを競う採点競技。
日本代表「波乗りジャパン」は、プレッシャーをはねのけて出場権を勝ち取り、入籍したばかりの地元出身・大原洋人選手(24)のほか、プロ最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)男子で世界ランク6位につける五十嵐カノア選手(23)、女子はハワイ育ちの前田マヒナ選手(23)、CT女子に日本人として初めて参戦した都築有夢路(あむろ)選手(20)の計4人。
海外の注目選手は、CT男子の昨年王者ガブリエウ・メジーナ選手(27=ブラジル)、ケガから復帰した世界王座2度のジョン・ジョン・フローレンス選手(28=米国)、世界女王4度のカリッサ・ムーア選手(28=米国)、豪快な技をみせるサリー・フィッツギボンズ選手(30=オーストラリア)ら。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する