きのコさんは「自分と違うタイプの当事者が表に出てきて、ともに情報発信をしてくれたら」と語る 撮影/山田智絵

自分にも他者にも正直でありたいから

 ポリアモリーという言葉がひとり歩きして、「浮気心があること」のように考えられがちだが、きのコさんが大事にしているのは「全員の合意」である。例えば、きのコさんが、男1,男2とつきあうとする。その3人だけで合意がとれればいいわけではない。もし男1に新たな好きな人Aができれば、その人も交えて再び合意が必要だ。ひとつの恋が発展して、その“輪”がどのくらいの大きさになるのかは、想像がつかないこともあり得る。

 さらにどの時点で合意を得るのか。

「私は付き合う前に合意をとったほうがいいと思っています。私自身はパートナーがいたら、他に好きな人ができた時点で言いますね。まだその相手と付き合うかどうかは別として」

 ポリアモリーは複数の人を好きになるから、1対1の関係より濃度が薄いと思われがちだし、「適当に」付き合っているのではないかとも思われがち。だが、彼らは自分に正直であり、他者にも正直でありたいと思っているのだ。嘘をつかず、誠実に付き合うために「他に好きな人ができた」と告白するのだ。そこでフラれてもしかたがないと覚悟を持って。もちろん、それを他者に押しつけることはない。

「私自身、付き合ったモノガミーの男性に“他の人とは付き合わないでほしい”と言われたことがあるんです。その人のことが好きだったから、2年くらい頑張って我慢しました。でも、じわじわと苦しくなっていく。とうとう、私には1人だけは無理だと告白しました。自分を偽ると、あんなにつらいものなんだとよくわかった経験でした」

 自分を偽らないことが、いわゆる“一般社会の規範”とは相容れない場合、どうすればいいのか。ポリアモリーは常にそうした煩悶を抱えながら過ごしている。

(取材・文/亀山早苗)

【※きのコさんに将来像を語ってもらった後編は、明日10/11(月)の11時に公開します】