「映画が好きで、小学生のころからよく見ていました。最初にハマったのが『がんばれ! ベアーズ』というアメリカの少年野球チームの奮闘を描いたコメディー。あとは『小さな恋のメロディ』とか洋画を中心に見ていました。邦画だと角川映画全盛期だったので、むさぼるように見ていましたね(笑)。
そこから映画の仕事をしてみたいと思い、最初は監督を目指そうと思ったのですが、敷居が高いと周りから言われ諦めまして。じゃあ、俳優ならできるかなと思って目指し始めたんですけど、そこからが大変でした(笑)」
正義感あふれる刑事や、狂気の犯罪者、心やさしき夫など振り幅の広い演技でさまざまな作品に出演。いまや名バイプレーヤーとして引っ張りだこの津田寛治。しかし、下積み時代は長く、苦労も多かったと話すが、ある人と出会い自らを売り込んだことで人生が変わる。
「25歳のころでした。録音スタジオの喫茶店でバイトをしていたんです。そこに(ビート)たけしさんが『あの夏、いちばん静かな海。』の仕上げのため、よくいらっしゃっていて。当時、『その男、凶暴につき』『3-4X10月』を見て、たけしさんって芸人だけでなく、監督としてもすごい方だなと思っていたんです。なので、たけしさんが休憩している合間に、緊張でしどろもどろになりながら手紙とプロフィールをお渡ししたら“わかりました”と受け取っていただいて。すごく紳士的に対応していただきました」
北野組の現場の魅力
すると北野組から声がかかり『ソナチネ』(1993年)で念願のスクリーンデビュー。
「初めての映画の撮影はとてつもなく楽しかったです。北野組は台本があってないようなもので、次の日何を撮るかみんな知らないんです(笑)。だから、“明日どんなの撮るんだろう”ってみんなで盛り上がったりして、ベテランや新人もなく、みんなで一生懸命楽しく映画を撮っている現場だった。映画は何が起きるかわからない楽しいものというたけしさんのメソッドが、いまでも僕の俳優としての芯の部分になっていますね」
たけしとの出会いで演じる楽しさを知り、テレビに映画、舞台など数々の作品に出演してきた津田。そんな彼は10月8日公開の映画『ONODA一万夜を越えて』で遠藤雄弥とW主演。フィリピン・ルバング島で終戦を知らされないまま約30年間任務を遂行し続けた小野田寛郎さんの壮絶な人生を描く本作で、小野田さんの成年期を演じる。
「13kgくらい減量して撮影に臨みました。カンボジアでロケをしたんですが、見たことのない虫もたくさんいる状況。日常生活でジャングルにずっといることなどないので、心が欠落していくというか、無に近づいていく感覚になるんです。小野田さんもそういう状況になったんだろうなと気づきましたし、30年間も自分だったり、いろんなものと向き合って生きてきたんだなって演じていて思いました」
役にストイックな津田だった。
自身をいちばん知っている芸能人について聞くと──。
「羽田美智子さんです。『花嫁のれん』や『特捜9』とか、夫婦役だったり刑事役だったり本当にいろんな作品でご一緒させていただいて。普段も“元気?”とか、たまに連絡を取り合ってます。『特捜9』メンバーはわりとみんなで連絡取っているんですよ。イノッチ(井ノ原快彦)も“ユーチューブで面白いのを見つけました”とか動画を教えてくれたり(笑)。15年近く一緒だからみんな仲がいいですね」