【茨城県】和食 ばんどう太郎

●女将の心遣いが半端ない! マニュアルを超えた接客術

「試みが興味深いのは、『ばんどう太郎』です。普通のファミリーレストランの建築費の約2倍、およそ1億5000万円をかけて建てた、屋敷のような外観の店舗が出迎えてくれます。また、最後のお客さんをスタッフ全員でお見送りするなど接客に定評があります

 茨城県を本拠に、北関東を中心として展開する和食レストラン『ばんどう太郎』は、49店舗を構える。

「ここのオススメは、『坂東みそ煮込みうどん』。みそ煮込みうどんといえば名古屋ですが、こちらのものは関東人向けの味つけにアレンジされており、八丁味噌に白味噌を合わせて、いくぶんマイルドに。それに絶妙なかたさにゆでられたうどんを組み合わせています。

 具材も白菜やネギ、かぼちゃ、レンコンなど季節のものがたくさん入り、鍋の底から掘り出すのも楽しいです」

 そして、この店にはファミレスには珍らしく、女将(おかみ)がいるということ。

「長く勤務しているパートさんが女将を務めています。正社員だと2~3で異動してしまいますが、パートさんなら同じ店で10年以上続けるケースも。なのでお客さんの名前を覚えて呼びかけるなど、きめ細やかな接客ができます

 なにより“地元ファースト”の考え。みそ煮込みうどんの味つけも、

「“地域によって味に対する感覚が違うのは当然、隣県でも県民性や味覚が違う”と、店長にできるだけ地元の人をつけ、味の管理も任せているとのことでした。例えば、千葉県の人は栃木県などに“あまり異動させない”そうです」

固形燃料で火にかけられたまま出されてくる『坂東みそ煮込みうどん』。バラエティーに富んだ具材が楽しめる

【熊本県】おべんとうのヒライ

●外食・中食・コンビニ3業態混合の“最強”チェーン

「熊本県を中心に九州に140店舗ものお店を構える、ローカル“メガ”チェーンが『おべんとうのヒライ』。ロードサイド店ではお弁当の販売に加えて、日用品も扱うコンビニ、食堂がコンビニサイズの店舗に収まっています」

 車社会の熊本で人気の店。ただ3業態が入っているだけでなく、人気の秘密はそれぞれのコスパと質の高さ。

ジュースが40円台からあり、電子マネー『コジカカード』で支払えば、朝はおにぎりとサンドイッチが2割引き。とりあえずヒライに行けばなんでもそろうという感覚です。名物惣菜の『ちくわサラダ』は、ちくわにポテトサラダを入れて揚げたもので、食感が楽しく濃厚な味わいがたまらない一品。

 イートインでも社員の山瀬さんが作り上げた『山ちゃんラーメン』も人気。たくさんの具材が楽しい、食べ応え十分の熊本ラーメンにして、450円です」

 そんな中でもぜひこれを食べてほしいというメニューは、

『大江戸カツ丼』です。カツを卵と一緒に煮るのではなく、サクッと揚げたカツにトロトロに煮た卵をかける丼。とにかく食感が格別で、値段も500円とリーズナブル。エビ天とカツを一緒にのせた、『かつ天丼』など、おトク感がすごい期間限定メニューたちも魅力です」

トロサクの食感がクセになる『大江戸カツ丼』。震災によってなくなってしまった老舗店の味を参考にしている)

 緊急事態宣言も解かれ、少しずつ元の生活が戻ってくる兆しが見え始めた今。感染防止対策をしっかりしながら、“ここでしか食べられない”ものを目指す旅に出てはいかが!?

辰井さんの著書『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)

《PROFILE》
辰井裕紀 ◎ライター、番組リサーチャー、元放送作家。『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系)のリサーチを7年間務める。近著に『強くてうまい!ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)

(取材・文/蒔田稔)