同じく特産品をアピールする狙いでつくられたのが、大阪府泉佐野市の『ワタリガニ条例』。といっても、ワタリガニを食べようと謳(うた)っているのではない。
「条例には、《市民、事業者および市は、写真を撮影する際にワタリガニを表す姿勢をとること》とあります。写真を撮るときは、ピースサインをしてカニのまねをしましょうというもの。あくまで推奨なので、違反しても罰則はありません。これも乾杯条例の一種といえますね」
特産品というモノではなく、住民などのヒトに直接、働きかける条例もある。
「兵庫県多可町の『一日ひと褒め条例』は1日に1度は人を褒めることを推奨しています。それにより住民同士が尊重し合い、コミュニケーションも円滑になるとか。
似たような条例として、栃木県国分寺町や鹿児島県志布志市などには『子ほめ条例』があります。特に志布志市では、親孝行賞、親切賞、友情賞など12もの賞を用意して、親孝行だったり親切だったりする子どもを市が表彰しています。子どもを褒めるのは大切なことですが、大人の物差しで型にはめ込んだ評価を与えても、かえって反発を招きそうで気になります」
住民への働きかけという点で、三重県紀勢町の『キューピット条例』はさらに踏み込んでいる。30歳以上の住民の結婚促進のため、「キューピット委員」という仲介人が婚活の世話をしてくれるのだ。
「結婚が決まれば20万円の手当がもらえるとか。婚活中の人にはよい制度ですが、そうでなければ余計なお世話ですね(笑)。条例ではありませんが、ここ数年、婚活を支援したり街コンを主催したりする自治体が増えています。人口減少は悩みの種ですから、どこでも定住策に必死です」
はたから見ればヘンでも、地元では大まじめにつくられている全国各地の条例。
「たかが条例と思ってしまいそうですが、鹿児島県のつきまとい防止条例が、のちのストーカー規制法につながった例もあるんです。気になるものは今後もチェックしていくとおもしろいと思います」
条例より数は少ないけれど、法律にも一風変わったものが。
「『軽犯罪法』ではリアルすぎる警察官や自衛隊員のコスプレを禁じています。ニセ警官やニセ自衛官がその辺をうろついていると、無用な混乱を招いてしまうからです。詐欺や強盗などの凶悪犯罪の温床にもなりかねません」と、長嶺さん。
また、『日米地位協定』では、アメリカ軍人のリアルなコスプレを禁じている。たとえハロウィンでもNGなので、ご注意を。