かつて、年に一度、日本テレビの『木曜スペシャル』という番組枠で放送されていた、視聴率20%超の人気番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』(以下、ウルトラクイズ)。

 国内予選を勝ち抜いた一般の視聴者をアメリカ大陸へ連れて行き、チェックポイントで行うクイズによって、1人、また1人と帰国させていき、最後の2人はニューヨークで決勝を行うという壮大な番組でした。

 今回は、そんなウルトラクイズで準優勝をさせていただいた私が、帰国してから「もっとも多くの人に聞かれた質問」と「その答え」について。

帰国してから、いちばん多く受けた質問

 ウルトラクイズの丸1か月にわたる旅から帰国し、その約1か月後にテレビで放送されると、私がウルトラクイズに行ったという事実が広く周りに知られることになりました。

 すると多くの方から、こんな質問を受けたのです。

「敗者への罰ゲームって、本当にやっているんですか?」

 ウルトラクイズでは、各チェックポイントにおける敗者が「罰ゲーム」を受けてから帰国するというのが「お約束」でした。

 この罰ゲーム、敗者が体力を使ってヘトヘトになるものや、ドッキリ番組のようなものまで多種多様。

 ちなみに、罰ゲームを受けるのは、アメリカ本土までたどりついた挑戦者だけはありませんでした。例えば、グアム島へ向かう飛行機の中で行われる筆記クイズの不合格者は、「飛行機のタラップを降りることが許されず、アメリカの地を踏むことなく帰国する」のが罰ゲーム。

 また、今でもバラエティー番組でオマージュとして使われることが多い、グアム島での「泥んこクイズ」では、×クイズを間違えたら泥まみれになるのが罰ゲームというわけです。

 視聴者にとっては、挑戦者がタラップから降りられずに悔しがったり、〇×クイズを間違えて泥だらけになったりするのは一種の快感であり、罰ゲームは、言わば、“ウルトラクイズの人気コーナー”でした。事実、私の知人にも、「ウルトラクイズは泥んこクイズがいちばんの楽しみ」と言っている人がたくさんいました。

 それだけに、「砂漠を1人っきりで歩いて帰る」などの罰ゲームが「本当に行われているか?」「本当はどの程度まで行われているか?」というのは、ウルトラクイズのファンなら誰もが思う疑問だったのだと思います。

罰ゲームは実際に行われていたのか?

 ウルトラクイズから帰国後、「あの番組の罰ゲームって、本当にやっていたの?」という質問を受けると、私はいつもこう回答していました。

「視聴者がテレビで見て感じるよりも、実際の罰ゲームは、はるかに大変です」

 例えば、敗者が体力を使うような罰ゲームの場合。

 テレビでの罰ゲームのオンエア時間は、せいぜい10分程度。しかし、スタッフが撮りたい映像は、体力を使い果たして疲れ切った敗者の顔です。

 つまり、敗者がヘトヘトの汗だくになるまで罰ゲームが2時間でも3時間でも続く。これが、「実際の罰ゲームは、はるかに大変」という所以(ゆえん)です。

 では、視聴者にとって最大の謎だった、「砂漠を歩いて1人で帰る」というパターンの罰ゲームの場合、実際はどうだったのか?

 さすがに視聴者も、本当に1人で歩いて帰してはいないことはわかります。オンエアでも、ちゃんと「第○チェックポイント 失格者○○(失格者名)帰国?」って、最後に「?」がついたテロップを出していました。

 では、その手の罰ゲームはキツくなかったのかというと、そんなことはありません。

 体験者に聞くと、これが相当、大変だったそうです。

 まず敗者は、砂漠のはるかかなた、自分の姿が米粒のように小さくなるまで1人で砂漠を歩かされます。スタッフとしては、そういう絵が撮りたいのですから当然です。

 私もウルトラクイズに参加したときに体験しましたが、砂漠の砂の上を、旅行用トランクを引きずって歩くのって、むちゃくちゃにキツイ。キャスターはほとんど役に立たず、挑戦者用のバスから解答席へ移動するだけで、すぐに腕がパンパンになりました。

 ですから、砂漠を延々と歩かされるのは、それだけで、かなりキツイ罰ゲームなのです。

 しかも、それだけではありません。ある敗者は、撮影のオーケーが出たあと、車に拾われて空港まで送迎してもらったそうですが、小さな車で、車内は蒸し風呂のように暑くて振動も半端なく、それが何時間も続いたとか。「帰りの車のほうがよっぽど罰ゲームだった」とのことで、これなどは、罰ゲームがもうひとつあるようなものですね。

罰ゲームは、敗者にとっての晴れ舞台

 ちなみに、この罰ゲーム。厳しい反面、敗者にとっては、とてもオイシイ時間でした。

 ウルトラクイズの精神のひとつに「敗者が主役」という言葉があるように、実は出場者にとって、この罰ゲームは、言わば「晴れ舞台」。

 なにしろアメリカ本土に入ってからの敗者は、基本的にはチェックポイントごとに1人だけで、罰ゲームはその敗者に対してパーソナルで行われます。つまり、ゴールデンタイムに流れる視聴率20%超えの人気番組のなかで、約10分間にわたって画面を独占する「主役」になれるのです。

 こんな機会は、一生のうちに、そうあるものではないでしょう。

 もちろん、子牛を相手に闘牛をしたり、スタントマンのまねごとをしたりなど、キツイ罰ゲームもありますが、すべての罰ゲームは事前にスタッフがやってみて、安全性は確認ずみ

 敗者にとっては、考え方を変えれば「二度とできない、とんでもない体験」ができる、最高の思い出の場でもあったのです。

 私が参加した第10回の参加者にも、「自分が負けたとき、どんな罰ゲームをやらされるか楽しみ」と言っているメンバーがいました。

 ちなみに、決勝で負けた私への罰ゲームは何だったのか? 

 それは「放置プレイ」でした。

 決勝で勝負がついたあと、チャンピオンは司会者からインタビューされたり、シャンパンを飲んだりしますが、その間、準優勝者はほったらかし。最後まで、いっさい無視されるのがパターンでした。

 あとから知ったのは、それが準優勝者への「お約束」の罰ゲームなのだそうです。

 今となっては伝説のクイズ番組となった『アメリカ横断ウルトラクイズ』。罰ゲームは、そのウルトラクイズの華(はな)でした。

 なかには、それとは知らずにゲテモノ料理を食べさせられたり、事件に巻き込まれるドッキリがあったりと、たぶん、今のテレビでは倫理上、オンエアが難しそうな罰ゲームもありました。

 しかし、それも含めて「テレビに勢いがあった、よき時代」の思い出として、懐かしいと思ってしまうのです。

(文/西沢泰生)