どこからでもかかってこい!

 STEELとしての活動を終え、一時期は俳優業に専念した収史。このころの出演作品に映画『きょうのできごと』『オーバードライブ』『血と骨』、ドラマ『エースをねらえ!』などがあるが、ふたたび音楽にも力を入れるようになる。

2003年1月、映画『きょうのできごと』(行定勲監督)がクランクイン。妻夫木聡、田中麗奈の顔も見える 撮影/廣瀬靖士
2004年11月、映画『血と骨』(崔洋一監督)の舞台挨拶より(右から2人目)。主演はビートたけし 撮影/下宮信敏

「そこでまた新たな出会いがあるんですが、STEEL の楽曲制作を通じて仲よくなったABOTTOレオという僕の3つ上のミュージシャンと2人でプロデュースユニットを組んで(ShAbo名義)、企画書を作っていろいろプレゼンしましたね。実現はしませんでしたけど、マツコ・デラックスさんに歌ってもらおうとか、ボブ・サップがラップをやって『ボブ・ラップ』とか(笑)。

 実は川越シェフがCDを1枚出しているんですが(2012年4月リリースのシングル『お米のおはなし』)、それは僕とABOTTOレオの企画です。川越さんが『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングで “歌の仕事もやってみたい” とおっしゃったのを見て、ホームページの《お仕事はこちら》のところから連絡して。歌詞は仲のいい徳井くん(チュートリアル・徳井義実)に書いてもらいました

 そうした音楽活動の母体となったのは、31歳のときにつくった「株式会社ロックミー」だ。

「会社を立ち上げてからは、本当にいろいろな音楽を作らせてもらいました。楽曲提供もそうですが、パチンコのBGMが大きかったですね。数をいっぱいやらせてもらって経験を積めたし、成長させてもらった。

 1台だけでもいろんなところからフリが来て、この曲はジャズっぽい感じでお願いします。ボサノバ調でお願いします。演歌でお願いします、と。“わかりました!”って言って、“えーっと、ボサノバってどういうリズムなのか” とYouTubeで調べたり。プロとして、できないとは言えないので。しかもスピード感が求められるし、評価もすごく厳しくて何回も作り直すのは当たり前。電子音とかの研究もしましたし、いろいろなジャンル・作り方を学んで習得しました。精神的にはめっちゃくちゃ大変でしたが、おかげで今はもう “どこからでもかかってこい”です(笑)

柏原収史 撮影/山田智絵

 変わったところでは、九州は福岡県のガールズエンターテインメントユニット「トキヲイキル」のプロデュース公演の舞台演出も手がけている。

「トキヲイキルは大きく言えばSMAPやTEAM NACSのように個人の活動もしながら舞台・芝居をやっていくコンセプト。もともと演出をしようという発想はなかったし、したいとも思っていなかったんですが、トキヲイキルのプロデューサーに “ぜったいに柏原さんやってください” みたいに頼まれて、なんだか断るのも悔しいし、思い切って飛び込んだのが最初で、まさに “導いてもらった” 感覚です。今年もまた3週間ほど福岡に行きますが、もう8本目になります」

 舞台では音楽も手がけているが、演出はまったく初めてからのスタート。

「学ぶことがたくさんありました。それまで演じるほうばかりだったのが、視点が変わることでさらにお芝居の可能性に気づけたり。素人だらけだった演者の彼女たちが、回数を重ねていくことで成長していく姿を見るのも、親心としてうれしいところがありますね」

トキヲイキルプロデュース公演『雨夜の星屑』(2021年11月24〜28日、ぽんプラザホール)では演出と音楽を手がける
トキヲイキルの稽古場。九州・福岡を拠点とする彼女たちとの交流は2017年から