死ぬまで「役者」を続けていく
俳優としての最新作は11月12日に全国公開された映画『信虎』(金子修介監督)だ。2021年は武田信玄の生誕500年にあたるが、信虎はその信玄の父。甲斐の国を統一し甲府の礎(いしずえ)を築いた国主だ。
「山梨県の出身者として『信虎』にお声がけいただいたのは本当に光栄です。特に甲府の駅前にある武田信玄の像には思い入れがありますし」
懐かしく思い出されるのは、デビューから高校卒業までの3年だ。
「甲府駅から特急あずさに乗って東京に通った日々は、僕の中では思い出深いし、大変だったし、芝居がうまくできなくてつらかったということもあったし。
その出入り口にいつもあるのが信玄像でした。あそこまで母に車で送ってもらって電車に乗って、帰ってくるときもあそこの前で待ち合わせして。いまだにあの像を見ると何か胸がキュッとなる。いまの言葉だと “エモい” というんですか(笑)。まさにエモーショナルな気持ちになるというか」
映画は戦国時代が舞台だが、収史が演じるのは徳川幕府の5代将軍・綱吉に側用人として支えた柳澤保明(のちの大老格・柳沢吉保)。およそ100年後の江戸時代から、甲府にゆかりのある保明が信虎の生涯を振り返る設定で、映画全体のキーパーソンを演じている。
「完成した作品を見て驚いたんですけれども、エンドロールでは僕の名前がトメ(出演者の最後にクレジットされる重要な役割)にあって。トメというのは僕は初めてなんじゃないかな。自分もそういう年齢になったんだなと、感慨深かったです」
デビューから28年。男盛りの年齢を迎え、まだまだ歩みを止めるつもりはない。
「役者って続ける根性さえあれば、続けられる仕事だと思うんです。50歳には50歳の役があるし、60歳には60歳の役がある。
それに、僕は今でも亡くなった細川さんに手を合わせたりしていますが、ずっと見守ってくれているような気がするんです。僕が恩返しできるとしたら、お仕事をいただけるかぎり、一生役者を続けていこうという思いがあります」
※後編は『柏原収史、40代を迎えて大きな決断。「最大のピンチ」をチャンスに変える』
(取材・文/川合文哉)