前回、玉山にインタビューしたのは朝ドラ『マッサン』のころ。10か月以上におよぶ撮影がいよいよ大詰めを迎えていて、疲労の中にもたしかな充実感をのぞかせていた。
「『マッサン』は自分にとって本当に大きい作品でした。わかりやすく言うと、いい評価も大きいし、悪い評価も大きいし、苦しみも大きかった。いま振り返ると全部が大きかったです。だから撮影中はずっと走っている感覚でした。1回でも止まっちゃうと、なんか終わっちゃいそうな気がしていましたね」
収録はNHK大阪放送局で行われ、家族と離れて単身赴任の日々だった。
「子どもと数か月も会えないとか、スケジュールもすごくタイトだし、あまり睡眠時間もとれず、けっこうなストレスもありましたね。
ふだんと違ってヒロインが外国の方でしたし、気遣いやコミュニケーションの部分で、日本人どうしでも難しいのに言葉のこともあって大変だったし。でも大変だったけれど、その経験も本当に僕の身体の一部になっています」
──取材の日はインタビューのあと東京に帰るスケジュールだったようで、やたらチャキチャキと答えてくれたのを覚えています(笑)。
「あはは(笑)。1本でも早い新幹線で帰りたかったんでしょう。撮影中は “これが終わったら……”と思いながら、家族に会うのを楽しみにずっとやっていましたね」
いろいろと話をしていると、玉山は子育ては妻にまかせっきりというタイプではなく、積極的に家庭にコミットしているのがわかる。
『マッサン』で取材したころ長男はまだ2歳で、おみやげに新大阪駅でコンペイトウを買って帰るんだと言っていた。大好きなコンペイトウで機嫌をとったら、自宅近くの公園に連れていって一緒に滑り台を楽しみたい、とも。
「いまは男と女、両方いるんですけど、僕は男の子に対してはめちゃくちゃ厳しいですよ。女の子にはぜんぜん厳しくありませんが、やっぱり同性だから。
大人になったときのことを考えて “そんな甘くねーぞ”というのがあるんでしょうね」
──お兄ちゃんは、その扱いの差に不満は?
「感じてると思いますよ(笑)。だから、たまに男ふたりだけで旅行に行ったり。それでも、あんまり助けないようにはしています。
2月も一緒にスキーに行ったんですけど、スキーって滑るまでに準備することが多くてめっちゃ大変じゃないですか。ブーツをはいたり、ウエアを着て、重い板を持って……。周りの大人たちを見るとみんなやってあげているんですよね。でも、僕はぜったい手伝わないですもん。そのプロセスを経ないと楽しいことができない、というのをわからせたいと思って」